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もうLOVEっ!ハニー!
第9章 本性探し
暖かい手に指先が包まれてハッとする。
茜先輩が私の冷たい指先を包んでいたんです。
「大丈夫。うちの寮ね、正規じゃないってだけで突っかかってくるクズどもが結構いるの。困っちゃうんだけどね。奈己とか亜季レベルに目立っちゃえば良いんだけどさ。そう、心配してたんだよ。早乙女くんと村ちゃんは入学式で良い感じにスターになったから良かったんだけどさ。かんちゃんてそういう子じゃないし、いつか下手に目つけられるんじゃないかなあって」
そう言えば、初対面の時も話し出すと止まらない方でしたね。
本心から出る言葉たちだからこそ、長さに関わらず響くのでしょうが。
「ところで、こいつ誰?」
美弥が画面を指差したので、全員覗く。
光を浴びた胸元までの黒髪。
薄い唇の下にほくろ。
生真面目に整った制服。
「え……」
固まった私に注目が集まります。
その次の反応を待ち望んで。
でも、裏切ってしまうんでしょう。
だって……
「かんな」
「かんちゃん?」
「心当たりあるのかしら? この変態処女っぽい撫子ちゃん」
ごくりと生唾を飲み下す。
「えと……誰でしょう、彼女」
三人の先輩は同時に呆れて眉を歪めた。
それを私たちも訊きたいのだと。
「クラスの子?」
「実は、クラスの人全然覚えてなくて」
「にー。まあ、そこは仕方ないけど。こいつ一年だよね?」
「まあ、バッヂの色はね」
「単独犯かしら?」
「ありうるにー」
画面を停止して、靡いた髪のまま静止した彼女をまじまじと観察する。
無表情のまま行われた行為。
確かに今朝、私の上履きに蜘蛛を仕込んだ女。
なのに、何故でしょう。
嫌悪感が沸いてこないのは。
笑わない暗い暗い大きな眼。
切り揃えられた真っ直ぐの前髪。
茶道部副部長。
そんな感じですね。
「んー、とりあえず茜。朝一日置きにかんなの靴見張ろうか」
「いいけど」
「ええっ? 良いですよ、そんな」
「捕まえないと」
「それから調教」
「気が合うね蘭」
「貴女は邪魔よ」
「だめ。ボクも」
「お二人とも!」
こんな悪戯程度の報復が怖すぎます。
悪戯……まあ、まだ、ですね。
「この映像はどこから?」
「……管理人さんから」
「やるな、狸」
「狸?」
「かんちゃん、あいつは中々の悪だから信頼しすぎないようにね」
ばちん、とウインクされて反応に困る。