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もうLOVEっ!ハニー!
第10章 甘い笑顔と花束
「あっ、真面目に話を……」
眉をしかめた瞬間、唇が重ねられた。
ガン見していた亜季の目を寸前で奈己が覆い、クラスに異様な空気が走る。
「ん、ふ」
アンナが恍惚とした笑みを浮かべながら貪る。
対するルカは苦悶の顔で為すがままになっていた。
これは、いつものことだった。
週に二回程度。
彼女の過激なスキンシップを、ルカはもうキスフレとして受け入れていた。
スタンプからディープに変わったときは抗議したが、それも無駄となってからは諦めている。
ルカの舌を食みながら唇を離し、ペロリと鼻を舐める。
「ルカちゃん、今朝はピーチマスカットのタブレット食べたね」
「……正解です」
乱れた髪を直しながらルカが顔を背ける。
未だにこの時どんな顔をすれば良いかわからない。
告白をされたわけでもなく、突然キスをされ今の関係に至っている。
亜季は止めろと懇願したが、元々クラスで芸能人として浮いている二人の連帯感は他には伝わらぬものがあったのだ。
「ありがと。ルカちゃん天使。妹に負けてる場合じゃないもんね。がんばるー」
「頑張ってください。来月は水着ですよ水着」
「セミあるかな」
「あったら困ります」
そんな会話にクラスメイトが参加できるはずもなく、そのせいもあってキスフレはルカだけに留まっている。
いや、もう一人。
「アリスね、最近キスしてくれないんだよ」
「好きな人でもできたんじゃないですか」
「それはやだなあ」
「いつまでも貴女のモノじゃないんですから」
「ルカちゃんも?」
「私は誰のモノでもないですよ」
「むっちりおっぱい隠しちゃって」
「っん」
的確に乳首を指で押されて背中がビクリと反応してしまう。
なんでこう、まともな女子が近寄らないかな。
モデル業界の女子の争いが苦手で、そちらでも交友関係を築かないルカにとってアンナは数少ない友達だった。
「……好きな人かあ。あの子も生意気に」
御巫アリスのクラスは松園かんなとは違ったはずよね。
ルカは頭に過った彼女の姿をすぐ消した。
後輩の心配なんてらしくない。
誰がターゲットになったのかしら。
不憫ね。
教師が入ってきて、席に皆が着きながら、窓を叩く雨に目を向けた。