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もうLOVEっ!ハニー!
第10章 甘い笑顔と花束
「……湯浅先輩ですね? お姉ちゃんと同じクラスの」
着地した時挫いたのか、足首をぐりぐり回しながら美弥が顔を上げる。
「御巫アリス。かんなに迫るなんて良い度胸だにゃー。アンナはルカ一筋だから見逃してやってるけど、かんなに手出すなら黙ってらん……」
時が止まった。
それほど、その場にいた全員が固まってしまったのでしょう。
カツカツと威勢よく美弥さんに近寄ったアリスは、あまりにも自然な動作で懐に入り、唇を重ねたのです。
「ぅあ……」
「み、み」
露骨に嫌な声を溢す尚哉。
私は美弥さん、と言葉にならない。
本人は、何が起きたかわからないように直立していたが、ぴちゃりと音が鳴ったと同時に跳ねのいた。
アリスは手の甲を舐めて、にこりと微笑む。
ぞわあっと全員に鳥肌が立ったのは確認するまでもない。
「んな、なん……にゃにこの子。恐ろしい」
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。消毒して」
「はい。先輩落ち着け」
今度は私の唇が危うくなりましたが、尚哉さんが美弥さんの頭をがっちり掴みました。
「びっくりした。久しぶりにびっくりした。姉より行動早いな、アリス」
「褒めてますか? 先輩。先輩こそ、お姉ちゃんより唇柔らかくって甘かったですよ」
「んぎにっ、やめろ……」
今って昼休みですよね。
そんな現実が遠く感じてしまう。
さっきの告白は、決して冗談ではないと見せつけたアリスが、じっと私を見据えた。
背筋まで緊張する。
動画で見るより迫力ある美人さんです。
黒髪が頬に影をつけて、より一層美しく。
なんだか、バクバクしてきました。
「美味しいけど、先輩じゃあやっぱだめ。かんなちゃん。貴女の唇が欲しい」
ホラーもののゾンビでも相手するかのように尚哉と美弥が目の前を塞ぐ。
「こゆときは息が合うね、くー」
「あんなん見たら警戒しますって」
ど、どうすればいいのか。
逃げた方が良いんでしょうか。
「一回。とりあえず一回してみましょうよ。美弥先輩もそれでわかり合えたんだから」
「新手のサイコパスかにゃ」
「盲目なんだろ」
執拗さが滲み出て、流石に怖くなる。
でも、本当に体つきも綺麗な彼女から眼が離せなくなってしまう。
私に悪戯したのはアリスじゃない。
それだけでどこか気を許してしまいそうで。
「美弥さん、尚哉さん」
「断るっ!」
「でも……」