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もうLOVEっ!ハニー!
第10章 甘い笑顔と花束
どうやらそのお話は誰もしたくないらしく、曖昧な気分のまま寮に戻ることにしました。
エリさんの件と言い、まだまだ知らないことばかり。
それなのに頼る、というのは良いのかどうか。
前からの確かな縁は一人いますが、それを選ぶなんてこそ馬鹿と言うものですし。
頭を押さえながら自室に向かう。
すると、部屋の前に誰か待っていました。
クリーム色の壁に気持ち良さそうにもたれて、音楽を聴いています。
「あの」
「……おー。おかえり」
尚哉さん。
眠そうな目を擦りながらイヤホンを外し、ぎこちなく私の方を向きました。
「聞きたいことが二つくらいあるんだけど、此処じゃ美弥がいつ来るかわからねえから、俺の部屋来てくれない?」
えーと。
首を傾げていると、強引に肩を組まれて、回れ右をさせられる。
なんですか。
なんなんですか。
こんな至近距離は初めてです。
とことことペースに合わせて歩き出す。
「先輩、一体なんで」
「いいから」
「よくないです」
足を踏ん張って階段の手前で止まる。
「私、男の人の部屋は理由も知らずには入れません。そう決めてあります」
「あ。そこか。わり。気づかなかった。じゃあ、屋上でも行くか?」
ん、んー?
この人前から変わっているとは思ってましたが、この反応は流石です。
無意識に眉間に力が籠る。
「あの。じゃあ、私の部屋来ますか」
「それは俺が困る」
「そういうことです。屋上でなく外に出ましょう」
「あ。じゃあ、カフェ。奢る」
スタスタと降りていく身勝手な背中について行く。
お話。
聞きたいこと。
やはり御巫アリスの件でしょうね。
あの場にいたのは美弥さんと尚哉さんだけでしたから。
でも、ならもうひとつは?
学園の周辺には下校時の生徒を対象としたリーズナブルな価格のカフェが点在している。
チェーン店も駅前にはあるが、人気なのは待ち合わせ等にも多用されるヘレンズティー。
店の前の満開の花壇が女子の関心を引くそうなのですが、私は初来店です。
「いらっしゃいませ。お二人様?」
「二人です。喫煙席で」
「えっ」
「畏まりました。こちらへどうぞ」
いえいえ。
私服とはいえ、その選択は如何でしょう。
疑問を視線でぶつける私を振り返り、尚哉さんは無造作に呟いた。
「知り合いに聞かれたくねーの」