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もうLOVEっ!ハニー!
第11章 写りこんだ隣の姫様
「どうやって……」
「管理人は寮のマスターキーを持っていますよね。コンピューターにもそれがあるんです。管理するコンピューターがあって、それに接続されている学園の媒体のファイルは大抵読み込めるんです。まあちょっとしたキーを持ってるだけなんですが」
「どうして」
「そこは知らなくてもいいですよ。亜季にしか教えていないので」
この人、何者なんでしょうか。
モデルのルカ先輩と親友で、亜季先輩のことを本気で愛している。
「アリスの姉はルカがお世話になってますからね」
「アンナ、先輩ですか。知っているんですね」
奈己は大げさに腕を広げてリアクションして見せる。
「有名ですよ。毎日のように公然に見せびらかしているのですから。亜季も何度見ても嫉妬を捨てきれない行為らしくて……くだらないけど」
自らの唇をなぞって吐き捨てる。
ぞくりと独占欲を感じた。
「されたんですか」
「えっ」
「キス」
「いえっ、まだ」
「あはははっ。まだ、ねえ」
眼を細めて笑う姿に心拍が早まってしまう。
奈己の笑顔は無防備でいて、高嶺の花のように気高く見える。
どこぞの国の王子だと言われても信じてしまいそうな気品があるのだ。
本当にあり得そうで怖いですが。
「奈己先輩って、モテますよね」
「亜季以外への返事は全部、君のことは好きになれないの一択ですよ」
「……先を読まないでください」
「異性への断り方がわからないのでしょう? 優しさを含ませるのは最高の侮辱で非情なことです。さらりと拒否を示せばいいんですよ」
「でも」
「ええ。でも、君の場合は相手が寮生。これからも深く関わらざるを得ない間柄です。そうも邪険には出来ないですね。しかし当然逃げ場もありません」
「う……」
思っていることを全て読まれている気がしてくる。
分り易い性格をしているせいなのか、奈己の観察眼の鋭さのせいなのかは測りかねる。
「単純なこと。一人を選択すればいいんですよ。ガクなり尚哉なりね」
「っ、なんで尚哉さんまで」
「あの態度で気づいてなかったのならかんなちゃんは中々ですね」
ぐっと言葉を飲み込む。
そう言われて否定する言葉を持ち合わせていません。
「蘭先輩方は頼れませんか」
「えと、茜先輩なら」
「でも、その場には美弥先輩がいるんですね」
「……はい」
よくわかっていらっしゃる。
二年生なのが疑わしい。