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もうLOVEっ!ハニー!
第11章 写りこんだ隣の姫様
「まあ、君の勝手なんだろうけどさ」
奈己は理解に難いとぼやくような眼をした。
「なんで、判断基準が他人なんですか?」
「……そう見えますか」
「そうにしか見えませんよ」
座って下にいるはずなのに、奈己に見下ろされているような気分に陥る。
軽く唇を噛むように舐めて息を吸い込む。
「先輩が亜季先輩好きになったきっかけとかないんですか? 簡単に決められましたか」
「僕と貴方を同じにしないでほしい。美弥とかアリスに決めるならともかくね。そういうことなんですよ」
「でも」
「この話はやめにしましょうか? 不愉快になってきましたので」
優しさが消えた瞳に怯んでしまう。
それほどまでに……亜季先輩を。
黙ったまま、この空気の変換を押し付けてくるところは本当に苦手です。
「……ひとつ、聞かせてほしいんですが」
「何でしょうか」
つばるの表情が浮かんですぐに消える。
「色々お詳しいようなので、あの……最近外部の人間がこの寮について何かしようとしてたりって噂ありますか?」
「前の学校のお友達でも心当たりあるのですかね?」
何を隠せるというんだろう。
この人の前で。
管理人とはまた違う深みを目にして。
「……はい」
「その辺はファイル等の媒体に残せるわけではないので、確証を持って話すことはできませんがね。気になっているのは村山薫です」
「やっぱり」
「その反応は自身だけでなく誰か他の方からの情報を共にしてますね? 早乙女弟君ですか」
「メンタリストか何かなんですか」
「一年生の中では彼くらいしかいないですから」
墓穴を掘ったと後から気づき、自己嫌悪。
窓枠にもたれて、脱力する。
気を張っても仕方ない相手です。
「こういうときこそ、隆にいに頼ればいいと思いますがね」
「そしたら薫さんを退室させてくれるとでも仰りたいんですか」
「頼み方次第では? 少なくとも今みたいに突っかかってきたら却下されると思うけど」
「っ……すみません」
口を押さえて気を静める。
目の前の相手に鬱憤をぶつけたところで何一つ解決しないというのに。
ベッドの支柱が軋む音に顔を上げると、奈己が立ち上がって爪先が触れ合うほどの距離にいた。
美しい顔の造形から眼を逸らしてしまう。
「え……奈己さん」
後ろの窓に手をつけて、確実に退路を塞がれる。
窓ドン。
言ってる場合ですか。