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もうLOVEっ!ハニー!
第12章 騎士は王子と紙一重

「女子トイレの一件は知ってますか」
 恐る恐る反応を見ると、アンナは小さく頭を振った。
 つばるは私の視線から、特に説明すべきことでもないと判断したのか話題を変える。
「今日のあんたみたいに、アリスもやろうとすれば寮に入って来れるんですか」
「寮生が中から開ければね。もしくは一緒にとか」
 それはアリスが入ってくることを心配してのことだろうか。
 そう考えると、隣室の美弥に助けを求めて届くか気になってしまう。
 いや、そんな襲うなんてことしないと思いますが。
「学園の生徒じゃなくてもですか」
 その質問に、私は見当違いだったことを悟った。
 つばるの心配は薫。
 中学のみんなを連れてこないかという最悪の想像。
「……よくそれ思いつきますね」
「お前の心配だろ」
「今はアンナ先輩のことじゃないんですか」
「じゃあ黙っとく」
 きゅっと口を一文字にして、つばるは目線を下げた。
 この状況で丸投げですか。
 相変わらず勝手ですね。
「あの……私、アリスさんとは友達としてならいいんですが……その」
「キスだけはさせないで」
 アンナがゆっくりと警告した。
「それだけ覚えていてくれたらいいの」
 舐められたのはカウントされませんか。
 そう茶化せたらいいのに。
 脳裏に美弥さんの傷ついた顔が浮かぶ。
 あんな風に、痛々しく笑ってほしくない。
 蘭先輩や、茜先輩だって。
 ガク先輩は?
 尚哉先輩は?
「あとね。あなたの周りの人たちは、信頼し続けてほしい」
「……アンナ」
 ルカが辛そうに目を細める。
「だってああ見えてもモデルの妹よ? あの子が近寄れば、男も女も落ちるわ。私は落ちてくれないルカに惚れちゃったんだけど」
 悪戯っぽく腕を絡ませてきたアンナに、ルカがため息を吐く。
 世間的には自意識過剰気味な発言かもしれませんが、確かにアリスさんも、アンナさんもルカさんも、放つ雰囲気に説得力があります。
 ハッと目を奪われる美人。
 美しい人は空間さえ支配してしまうから。
 奈己さんのように。
「わかります……」
「本当に? 今貴方のことを好きだと口にする人たちが、アリスしか見なくなっても耐えられる?」
 それは……
 ああ、曖昧な私に鞭が振り下ろされる。
 先延ばしにしていた問題に、変化が起こされてしまう。
 誰も私を見なくなる。
 美弥さんも、つばるもガク先輩も。
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