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もうLOVEっ!ハニー!
第13章 諸刃の剣で断ち切る思い出
「わかりました。先になにか答えておくことはありますか」
「いえ、調書の際に詳しく聞きますので。あと見回りについて寮付近のパトロール強化してますので、ご安心ください 」
隆人は軽く息を吐いて、脱力した。
真ん中に座っているので二人と肩が密着してしまっている。
「つばる、体調は悪くない?」
「平気です。そっちのメンタルケアしてくださいよ。このあと言いたくないこと沢山答えさせられるんでしょ」
素っ気なく言いつつも、小刻みに膝を揺らしているのに気が付き、隆人は声を和らげる。
「本当にごめん。僕が最初にきっかけを作ってしまった。申し訳ない。怖かったよね。怖かったはずだよ。無茶をさせてしまった」
「いや、俺が撒いた種でしょ」
「いえ。私ですよ」
か細い反論に二人が振り返る。
私に決まってるのです。
村山薫はあの女子らと繋がっていて、私とつばるがいるのを知ったのですから。
「隆人さんだって、体調大丈夫なんですか」
「ああ。大丈夫。どこも怪我してないよ」
嘘に気付かぬほど馬鹿ではありませんよ。
ただそれを指摘するのは場違いな気がして、車内は静寂に沈んだ。
「では、係の者を呼びますので、車内にて少しお待ち願えますでしょうか」
丁寧に呼びかけてから警官が署に消える。
残された三人は緊張を今だけはほぐさんと体を伸ばす。
手を組んでぐっと腕を前に伸ばしたつばるが浅く息を吸って、痛みに耐える唸り声を漏らす。
「いえ、大丈夫です」
「まだ何も言ってないよ。虚勢は張らなくていいから、楽な姿勢に集中して。意外と胸周りって腕と連動して動くからしばらく痛いよね」
痛いですよ。
痛いはずです。
その瞬間は見てないものの、勝見の持っていた凶器は全員がしかと確認した。
「丸腰に突っ込んでくるとは思わなかったんで」
つばるはクク、と笑いを混ぜる。
「知ってた頃よりぶっ飛んでたんですよね。後先考えずに暴走する奴らじゃなかったんですけど。昨夜の時点で相談すべきでした。すみません」
「いやいやいや、君が呼んだわけじゃないだろう」
「似たようなもんですよ。迎えに行くって予告されていたんですから。時間通りに来るなんて保証無かったのに」
反省するつばるに胃がぎゅうっと締め付けられる。
「ま、まさか早朝なんて思いませんよ」
わざわざ何時間もかけて。
憎悪だけを頼りに。