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もうLOVEっ!ハニー!
第14章 思惑シャッフル

 明朝ノックが鳴ったので、珍しいなと思いつつ扉を開くと、唇をぎゅむっと噛んでにこりと笑う美弥が立っていた。
「どしたんすか」
「んー。三陸落ち込んでないかなあって。かおりんに告られてたんでしょ」
 正にそれで気落ちしていたところだ。
 不快なため息を吐いてから、部屋に入るよう促す。
「励ましに来てくれたんですか、センパイ」
「もっちー。陸はお気にの後輩だからに。かんなの恋敵なら許さんけど、話役くらいにはなるのだにゃ」
 慣れた足取りでベッドにダイブすると、足をパタパタしながら見上げてくる。
 この年頃の男子なら女子のこの姿に興奮するのだろうが、美弥の心の性別を熟知している陸にとっては同性の先輩がそこにいる感覚に落ち着く。
 冷蔵庫から炭酸ジュースの缶をふたつ取り出し、振らないように手渡すと、自分も椅子に腰かけた。
「助かるけど。こばるには話しづらくて」
「ぶっちゃけ返事はしてたの?」
「してませんよ。キスはされたけど」
 うにゃ、と耳がピンと立つのが見てるようだ。
「まじ? でもさっき去り際に何も話さなかったのは良かったの?」
「パトカーに乗せられてくのなんて見たいわけねーだろ。訳がわかんねえよ。あんな小動物みたいな女の子がかんなをいじめてただの、不良たちを招いただの。悪夢悪夢」
 額を押さえて自嘲気味に。
 美弥はぐびぐびとジュースを飲んでから唇を舐める。
「明日の朝にはかおりん引っ越すらしいよ」
「え、なんで知ってんすか」
「なるに聞いた。姉妹学園に転入だってさー。なんて理由になるんだろね。家族に通報もされてたから落ち込んでたってよ」
「そうか……」
 パタパタを止める。
「元カノで苦労したのに、またメンタル刺されちゃったねー」
「……面白がってる?」
 疲れきった声を包み込むように、起き上がって進み出た美弥が抱きしめる。
 顔面が確かにふわふわの胸に押し付けられていて、缶を握る手に力が篭もる。
「ちょ、美弥先輩やめて。苦しい」
 素直に腕が離れると、なんだか寂しい気持ちが残る。
「災難だったね。忘れなさい。今年はまだ三分の二も残ってる。陸はボクが言うのもなんだけど赤髪が良く似合う好青年だにゃ。作ろうと思えば彼女なんていくらでも出来る」
 露骨な励ましに頬が緩んでしまう。
「いやー……ちっとは引きずるって」
 
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