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もうLOVEっ!ハニー!
第16章 台風の目の中
「旅行?」
「そ。一泊二日で行ってこよかなて」
外泊許可を取りに管理人室を訪れた岳斗は、年間計画を整理していた隆人の前のソファに腰かける。
ペンを机に置いて、隆人は椅子を回して相対した。
「相手は清龍でも司でもないよね」
「まあ。用紙二枚くれれば、後日わかるやろ」
提出しに来んねやから、と続ける岳斗に頷いて、引き出し三段目のファイルを取り出す。
華海都寮の生徒は基本外泊をしない。
長期休みであっても、家にも帰らないからだ。
もちろん恋人と、という前例はあるが。
今回も例に漏れずというわけだ。
「三年の王が一年の王女と結ばれたわけね」
「含みのある言い方ちゃう?」
隆人から紙を受け取り、自分の分はその場で提出しようとペンを机から奪う。
ソファに浅く腰かけ、日付や理由などを書き進めていると、コーヒーを淹れる音が響く。
「楽しそうだね」
「え、醸し出しとる?」
「漏れ出てるよ。年下彼女と幸せですって」
「……恥ず」
小中の習字で鍛えたボールペン字は、外見に似合わぬほど整っている。
死ぬほど嫌いな家族だが、その経験には感謝。
岳斗から用紙を受け取ると、隆人はコーヒーを口につけて内容を確かめた。
「うん。訂正はないよ。かんなちゃんにも同じ内容で持ってきてもらいなさい」
「おっけー」
立ち上がろうとした岳斗が、なにか思いなおしたように止まる。
ピアスの並んだ耳を撫でてから、隆人に目を向けた。
「あん時警察に行ったん隆にいと、つばるとかんなやろ。襲撃犯のほとんど院にも入らんかったてほんま?」
「ああ。そうだよ。前科もなければ未成年。今後も警備は強めていきたいところだね。そういうの、かんなちゃんから聞いてないの?」
「話したないやろ」
確かにね、と隆人は顎を擦る。
「寮の外に出る時はボディガードになってあげなよ。さすがに喧嘩売ってくる身の程知らずはいないと思うけど。無事に帰っておいで」
「寮の中はもう解決しとるかな」
その問いかけが、心の底からの不安を滲ませていたので、隆人は即答しかねた。
村山の転学、つばるの部屋移動、その後は大きな動きは無いものの、何もかもが落ち着いたかと言うと不透明だ。
特につばるの存在は岳斗にとっても大きな悩みの種だろう。
自分も酔って手を出しかけた記憶を飛ばしてはいない。
「そうだね、そこも岳斗次第じゃない」