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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を

 登録会の朝、長袖カーディガンとロングスカートのかんなに流石に服装を指摘してしまう。
「暑ない?」
「ちょっとまだ……体調悪くて」
「別日にしとく?」
「いえ、大丈夫です」
 色の濃いストールで首元まで隠す姿に、今までの服装を思い返して拭いきれない違和感を覚える。
 電車を乗り継いで会場最寄り駅に着くと、改札前でカードを落としたかんなが、拾おうと腰をかがめた。
 代わりに拾ってやろうと近づくと、ストールがズレて首筋に見覚えのない跡がついてるのを見てしまう。
 口に手を当てて、浅く息をする。
 どう見ても、それは、内出血の痕だった。

 広い会議室で説明会を受ける間、既に登録済みの岳斗は近くのカフェで暇を潰す。
 単語帳を捲りながらも、さっきの映像が強烈に繰り返されてしまう。
 額に手を当てて机にもたれる。
 アイスコーヒーを飲み干しても頭痛が取れない。
 そんなはずない、と否定しては、あの位置をぶつけることは無いと現実が突きつけられる。
 一週間、体を重ねてない。
 しかも自分はあの位置につけていない。
 黒い考えが雲のように形を大きくする。
 俺以外の誰か……
 この一週間のかんなの服装を思い返す。
 看病に訪ねた時は、ジャージのチャックを首元まで上げていた。
 そして、今朝の格好。
 何か、皮膚炎とか……
 どうにか変な考えにならぬよう、自分に言い聞かせてみる。
 聞けばええやん。
 彼女やろ。
 単語帳が破れる音がして、見落とせば、力が入りすぎて真ん中が裂けていた。
 落ち着け。
 何を先走っとる。
 聞く前から疑うな。
「お待たせ、しました」
「おう。何飲む?」
 向かいに座ったかんなをじっと見る。
 うっすら額に汗が滲み、ハンカチで押さえる。
「暑かったやろ」
「ここは、冷房が効いてますね。緊張しちゃって……無事に終わって良かったです」
 変わりはない。
 いつもの話し方。
 でも、今朝から、目が合う頻度が少ない。
「アイスティー頼みますね」
 店員呼び出しボタンを押そうとしたら指に、手を重ねる。
 意味を尋ねるようにこちらを見た顔に問いかける。
「俺に話せんこと、溜め込んどらん?」
 時が止まったように、かんなが停止する。
 瞬きすらせず、数秒。
「ない、ですよ」
 ほら。
 嘘が下手やな、相変わらず。
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