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もうLOVEっ!ハニー!
第1章 生まれ変わり
門が開くのは朝七時半。
その十分前に着いた私に優しい事務員さんがドアを開けてくれます。
「おはよう、今日も早いね」
変わらない笑顔のおじさん。
あなたがいてくれて、この三年間は少しだけ明るかったですよ。
トイレに捨てられた制服を泣きながら抱えて門で夜明かししたときも、ココアを買ってくれましたよね。
覚えてますよ。
誰もいない玄関を開けて、教室に向かう。
こんなに早く来るのには、もちろん理由がある。
ガラッ。
朝だけの我儘。
壊すくらいの勢いで扉を開く。
「おっはようごっざいまーす!」
卒業の日くらいは、大きな声であいさつしたいですよね。
薄暗い教室に声が木霊する。
その余韻を楽しんだら、机の掃除です。
沢山の机を見渡す。
さて、私の机はどこです。
今日はなかなか凝ってました。
校舎を走り回って、やっと焼却炉の中から机を引き出す。
炭で真っ黒になった机を持参したタオルで、制服が汚れないよう包んで取り出す。
遠くで犬が吠えている。
私に向かってでしょうか。
すぐにタオルを濡らしてよく磨く。
綺麗になったところから、沢山の汚い文字が見えてくる。
これも慣れましたよね。
「ゴミ女」
「気持ち悪い」
「来んな、クズ」
これ以上読んでも得もありませんから、漂白剤に浸したたわしで擦ります。
お目汚し失礼しましたって、呟きながら。
それも終わったら、三階まで机と椅子を運ぶ。
まだ、同級生は来ていない。
部活で走っている後輩が不思議そうに見るだけ。
汗で濡れた前髪を整えて、自分の席に置く。
黒板には昨日書いたであろう卒業の浮かれた文字。
沢山の絵。
みんなの似顔絵。
三十四人分。
私の絵もありますよ。
一番端に、ぐちゃぐちゃの顔が。
大きく赤でバツもつけられて。
へたくそです。
机に座って、脚をぶらぶらさせながら眺める。
もうすぐ八時。
まだ、来ません。
だったら……
トンと机から降りて、黒板に近づく。
白い手で、黒板消しに触れる。
みんなの顔を見上げる。
笑顔。
へたくそな笑顔。
瞬きもせずに、右手を大きく動かす。
その十分前に着いた私に優しい事務員さんがドアを開けてくれます。
「おはよう、今日も早いね」
変わらない笑顔のおじさん。
あなたがいてくれて、この三年間は少しだけ明るかったですよ。
トイレに捨てられた制服を泣きながら抱えて門で夜明かししたときも、ココアを買ってくれましたよね。
覚えてますよ。
誰もいない玄関を開けて、教室に向かう。
こんなに早く来るのには、もちろん理由がある。
ガラッ。
朝だけの我儘。
壊すくらいの勢いで扉を開く。
「おっはようごっざいまーす!」
卒業の日くらいは、大きな声であいさつしたいですよね。
薄暗い教室に声が木霊する。
その余韻を楽しんだら、机の掃除です。
沢山の机を見渡す。
さて、私の机はどこです。
今日はなかなか凝ってました。
校舎を走り回って、やっと焼却炉の中から机を引き出す。
炭で真っ黒になった机を持参したタオルで、制服が汚れないよう包んで取り出す。
遠くで犬が吠えている。
私に向かってでしょうか。
すぐにタオルを濡らしてよく磨く。
綺麗になったところから、沢山の汚い文字が見えてくる。
これも慣れましたよね。
「ゴミ女」
「気持ち悪い」
「来んな、クズ」
これ以上読んでも得もありませんから、漂白剤に浸したたわしで擦ります。
お目汚し失礼しましたって、呟きながら。
それも終わったら、三階まで机と椅子を運ぶ。
まだ、同級生は来ていない。
部活で走っている後輩が不思議そうに見るだけ。
汗で濡れた前髪を整えて、自分の席に置く。
黒板には昨日書いたであろう卒業の浮かれた文字。
沢山の絵。
みんなの似顔絵。
三十四人分。
私の絵もありますよ。
一番端に、ぐちゃぐちゃの顔が。
大きく赤でバツもつけられて。
へたくそです。
机に座って、脚をぶらぶらさせながら眺める。
もうすぐ八時。
まだ、来ません。
だったら……
トンと机から降りて、黒板に近づく。
白い手で、黒板消しに触れる。
みんなの顔を見上げる。
笑顔。
へたくそな笑顔。
瞬きもせずに、右手を大きく動かす。