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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を
馬鹿な嘘をついている。
誰より味方になってくれる人を嘘で遠ざけようと、誤魔化そうとしている。
だってどうして、真実を言えましょう。
こんなに逞しく抱きしめてくれる人に。
「話してくれてありがとな。あ、俺こうして触るんも嫌やったら離れるから」
「いいえ……このままで」
そんな気遣いまでできる人に。
鼻水をすすり、暗くなる部室の景色が影に熔けていくのを眺める。
そろそろ寮に戻らないと。
だって、今日も呼び出されている。
「かんな、この後一緒におってもええかな」
いつもなら即答なのに。
「ごめん、なさい……休みたくて」
「わかった。ここまで連れ出しとるもんな、ごめん。シャワー浴びたらゆっくり休んでな。採点資料届いても、無理したらあかんよ。俺も手伝うし」
「そんな、悪いです」
「ええから。あと、外に出る時は必ず俺誘って。できるだけ時間作るから。一人で出ないこと」
「……はい」
脅威は寮の中にあるのに。
素直に言えない自分を締め上げたい。
岳斗はポンポンと背中を撫でて、ゆっくりと、立ち上がるのを支えてくれる。
「かんな、こっち向いて」
薄暗闇の中、岳斗の手が頬に触れる。
くっと身をかがめて優しいキスを落とす。
ああ、なんて幸せなんだろう。
たった数瞬。
柔らかく押し付けあった唇が、名残惜しく離れる。
「行こか」
手を繋いで、寮に向かった。
夕飯を済ませて、シャワーを浴びてから、約束の時間まで時計を眺める。
一体いつまで続くんだろう。
いつになったら解放されるんだろう。
誰にも言わなければ、誰も助け出してはくれない。
三階の密室で、人知れずに抱かれ続けるだけ。
いつものパーカーに着替えて、廊下に誰もいないのを確認してからそっと階段に向かう。
三度目の今日は、いつもと反対の西側の階段を使った。
こばるの部屋の前を通ることなく、人とすれ違う可能性が低いから。
なるべく足音を立てずに三階に到着すると、短くチャイムを鳴らして、すぐに扉から中に入った。
「今日も来てくれてありがとう」
清龍の言葉に顔を歪めて、ただ頷く。
玄関先で顎を持ち上げられ、命令のままに舌を出すと、指でつままれ軽く引っ張られる。
「そのままこっちにおいで」
舌を掴まれたまま、ヨダレを垂らしながらついて歩くのが余りにも滑稽で涙が出てくる。