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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を

 一階まで降りて、管理人室前の郵便ボックスを確認すると、採点資料が届いていた。
 傍らのノートの受け取りチェックの日付を書き加えてから、資料を持って部屋に戻る。
 タバコの香りが肺に残っているようで気分が悪く、何度も水道水でうがいしてから飲み干した。
ー初タバコ、美味い?ー
 まさかベッドでの経験だけでなく、タバコまで強要されるとは。
 満足そうな笑顔が焼きついて、心臓が騒ぐ。
 違う違う。
 あの人に何を奪われても関係ない。
 私は私のままです。
 資料を開封し、説明を読みながら、いつ開放されるのだろうかと思いを巡らせる。
 このまま消えぬ痕をつけ続けられて、岳斗に相談もできずに距離だけが空いていってしまったら。
 彼氏がいなくなれば、行為はさらに激化するはず。
 たかだか半年と言えど、もう一回すらも命令に従いたくない。
 弱みは増えていく一方で、解決策は暗雲の中。
 一体どうすれば。
 過去に戻るしかない気がしてしまう。
 あの嘘を見抜いて、関わりさえしなければ。
 寮内でも恥ずかしがらずにガク先輩と並んで歩いていれば……。
 イフを考えても意味ないのに。
 腕をポリポリと引っ掻く。
 ストレス性の湿疹ができているようだった。
 そうだ、郵便物はもう一つ。
 一週間で届いたことに驚きつつ、包みを開いて錠剤シートを取り出す。
 避妊をしてくれない相手への抵抗手段に、通販で購入してしまった低用量ピル。
 こんなの泣き寝入りだ。
 それでも、妊娠だけは避けたいと購入してしまった。
 予定では二日後の生理を終えてから飲み始めればいいはず。
 嫌に冷静な自分に辟易する。
 こんなことより、箱根旅行を考えて過ごしていたかった。
 毎晩ガク先輩と気兼ねなく会って、寝る前まで話していたかった。
 こんなこと……
「早くやめにしたい」
 答える声のない部屋に、虚しく響く。
 採点シートをめくり、ペンを走らせる。
 時間よ過ぎろと念じながら。
 明後日はバスケ部公式一戦目。
 寮生こぞって観戦に行くのだと、隆人さんが言っていた。
 予定が沢山ある方がいい。
 たとえどんな予定の後にも呼び出されたとしても。
 旅行まで、あと十日。
 それまでには、綺麗な体に戻りたい。
 
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