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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を
助手席に座り、シートベルトを締める。
初めて乗る車の香りは、なんだかミントのような爽やかさがある。
後ろに乗った尚哉が不満そうに零す。
「隆にい、シート倒せないの疲れるんだけど」
「ごめんねー。差し入れ諸々トランク埋まってるからさあ。ほら、ルカを見習って背筋伸ばして」
名前を出されたルカは、何処吹く風といった無表情で、隣の車に乗り込む亜季たちを眺めていた。
低音とともにエンジンがかかり、バックしてから校外へと飛び出す。
「今日は二回戦まででしたっけ」
「そうだよ、ルカ。全国一位にでもなったらさ、雑誌のインタビューとかでネタにできるんじゃない」
隆人の言葉に可笑しくてたまらないように笑う。
「本気で言ってます? なんで華海都寮にいると思ってるんですか。身バレなんてしませんよ」
「隆にいもアホなこと言うなよ、管理人のくせに」
「当たり強くない?」
ねえ、とばかりに目線を送ってきた隆人に苦笑いで答えてしまう。
明日予定通りに生理が来るのかと考えて、全然会話を聞いてませんでした。
高速に乗り、グンとスピードが上がる。
「音楽かけてもいいかな」
生徒三人はバラバラに頷いた。
「じゃあ、旅っぽい歌を流そ」
まったりとしたギターが流れ、聞いたことの無い歌謡曲リストが始まった。
久しぶりに会った隆人は、試合観戦が楽しみで堪らないようにニコニコと運転している。
「なる先生はいないんですね」
ふと気がついて尋ねる。
「あー。ちょっと里帰り中でね。応急処置道具は持ってきてるし、サブコーチが対応してくれるよ」
トントン、とリズムに合わせてハンドルを指で弾いている。
そういえば、カラオケ……
まだ行ってないですね。
そもそもカラオケなんて、十年近く行ってない。
何を歌えばいいのかも、わからない。
なんだか、カラオケは永遠にやってこない気もしてしまいました。
もうこのまま、三階のあの部屋に囚われて……
身体中好き勝手に使われて……
「首、暑くない?」
隆人の言葉にハッとする。
「えっ」
「タートルネックのインナー着てるでしょ」
指を差されて、返事に戸惑う。
だって、歯型が……キスマークが。
沈黙を貫いていると、尚哉が座席の間に割り込むように顔を出した。
「女は冷え性って言うだろ、隆にい。セクハラ発言やめときなよ」
「そんな気ないのに」