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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を
絶対尚哉さんはガク先輩の付けたものだと思ってフォローしたんでしょう。
優しさに裏切っているようで息が浅くなる。
外を見なければ。
せっかくの青空に、山々が見えるのだから。
口笛が聞こえたかと思えば、ルカが吹いていた。
ああ、平和だ。
なんて平和な車内なんでしょう。
このまま遠くまで連れてって、そのまま帰らなければいいのに。
アリーナ会場に着くと、ザワザワと喧騒に満ちていた。
県内から集まった同世代の人の群れに、いささか酔いそうになりながらも隆人と汐里の指示で一列になって移動する。
見慣れたオレンジのユニフォーム集団に、周りを取り巻く学園生徒の数。
「おー! こっちこっち!」
「みんな来てくれてあんがとさん」
こばると岳斗はアップ終わりなのか、汗を流してタオルを肩にかけていた。
他のチームメイトと顧問と輪になり、絆の強そうなコミュニティの真ん中にいる。
部活。
私も入れば良かったでしょうか。
でもあんなに素敵にとけ込めないはず。
「ガク、さっきの練習でもマークされすぎてるな。前半はパス回しでかわしていけ」
「えー。シュート狙ったらあかんの」
「シュートは二年に任せろ」
「得点王封印やんか」
顧問に駄々をこねるような姿が新鮮で、つい頬が緩んでしまう。
そして、そんな岳斗を見つめる目線が自分だけでないのに気づく。
マネージャーらしき女性陣、応援に駆けつけたジャージ姿の先輩たち。
からかうように名前を呼ぶ人もちらほら。
それをハエを追い払うように手を振って、さらに笑いをとる。
「見すぎじゃね?」
耳元から声がしてビクッと声の主を見上げると、尚哉がじとっとした目線を返す。
「い、いえ。人気者だなあって」
「見合わないとか思うなよ。あそこにかんなより可愛い女なんていないから」
サラリと言い捨ててマリケン先輩の元に行ってしまいましたが、私の頬の熱はどうする気ですか。
変わらぬ距離感で声をかけてくれる優しさ。
守られている、と感じる。
寮内で恋愛沙汰なんて面倒もあるはずなのに、優しく見守られている。
「三試合目らしいから、一時間は暇だよ。応援のひとつでも直接伝えてきたら?」
隆人が親指で岳斗の方を指す。
この人も。
恥ずかしさに逃げ出したい気持ちで首を縦に振ってから、人混みを縫うようにチームに近づく。