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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を
三階の窓から、二台の車が走り去るのを眺めてから、つばるは首を押さえて息を吐いた。
悪いな、兄貴。
やっぱ俺行けねえわ。
昨日買ったものをまとめたビニールを片手に、静かな廊下に出て屋上に上がる。
夏本番の太陽がジリジリと照りつける。
肌が焼けるのを感じながら、つばるは金網のフェンスを一周まわった。
流星群の夜を思い返しながら。
あんなに星を見たのは初めてだったな。
ブルーシートの寝心地の悪いこと。
チョコがけマイスの甘いこと。
盛り上がった先輩たちの恥ずかしい叫び。
思い出し笑いに唇を上げつつ、扉の右手の一角で立ち止まる。
そうだな、ここがいい。
袋から取り出したものを手でグッと握り、汗が伝うのを感じながら作業を進める。
生きてきた中でも中々な愚行だ。
パチン、パチンと音が響く。
一回戦は昼までには終わっているか。
勝つかな。
勝つだろ。
笑顔で凱旋して帰ってこいよ。
俺はいないかもしれないけど。
作業を終えてシャワーを浴びる。
着替えていると、扉が開いて宇宿司が入ってきた。
「えっ、つばるくん? 応援行ってないの」
「だるいんで」
まずい。
見られたくなかったのに。
不審そうな司の視線から逃げるようにシャワー室を出ようとする。
「最近さ、夜何か作業してる?」
扉に手をかけたまま止まる。
ごおっと換気扇の音だけが響いている。
なんだ。
どんな回答を期待してるんだ、この坊主。
横目で見ても、真意が掴めない。
「虫の声じゃないすか」
「本気で言ってる?」
間髪入れずに尋ね返されて息が詰まる。
司は上着に手をかけ上裸になりながら、目の前の空気を睨みつけているようだった。
「つばるくんは、友情が壊れそうな時どうする」
一刻も早く出ていきたいのに、重い質問を投げられて眉をひそめる。
「あんなクズたちが来た俺にそれ聞きますか」
「そうだよ。君は経験者だから」
司の目は真剣だった。
食堂での笑顔とは違う。
真っ直ぐに射抜かれる。
「俺は……壊れた友人は他人だと思って対応しましたよ。戻しようがないんで」
本音だった。
アイツらが正気に戻るのを期待するには、状況があまりにも進んでいたから。
「そうか……年下とは思えなくらい冷静だね」
「もう、行っていいすか」
「もうひとつ、聞いてもいいかな」