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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して

 はは、と乾いた笑いが漏れて、それに自分で驚いたように口元に手を当ててから岳斗が呟く。
「そう言われるとは思わんかった」
「あ。全然見当違いでしたら、ごめんなさい! ただその、楽しそうじゃないので……」
 そこで手が離れて、頭の後ろを掴むようにして引き寄せられると、柔らかく唇が触れ合った。
 ふふ、と笑うと釣られて笑ってくれた。
「ごめん、それはマジでそう。万が一に性癖やったとしたら、直したいしな」
「性癖……」
「なに?」
「いえ、そういうの考えたことなくて」
 息がぶつかる距離で話していると、ハラハラと心臓が騒ぎ出す。
「そうなんや。でもかんなは耳が弱いよな」
 ニヤリと笑って低い声で耳元で囁かれる。
 首筋がビクッとなって急いで離れようとしても、固定された手が頭を捕らえて離さない。
「ほら。めっちゃ可愛い反応するし」
「面白がんないでください……」
「今日の放課後、司と話すんやけど」
 ふっと、真剣な声に戻る。
 それも考えて歩いていたのかもしれない。
「ダチと真剣な話って慣れないな」
 司先輩。
 あの日、ふたりを目撃した唯一の生徒。
 清龍さんと……仲が、いい。
 寒気が走ったので、布団を胸までかぶる。
 ほんのり汗の香り。
「せや。かんなは友達おる? アリスは論外として」
 ああ、先手打たれた。
 友達……。
 寮の先輩方は含まれませんよね。
「正直、思いつかないです……つばるくらいかな」
「村山が良い奴やったら良かったな」
「それは本当に心からそうですね」
 よりによって悪魔でしたね。
「つばるか」
 ハッとして見上げると、遠い目が壁を向いている。
「二度と会いたくないもん同士やったのにな」
 会いたくない者同士。
 確かに、と思った。
 それが今では同じ寮なんて。
 でも、単純な友情なんてそこにはない。
 結局部屋を移動するほど過去がついてきた。
「あー……なして俺は三年……」
「岳斗さん?」

 言ってしまおか。
 つばると何があったか聞いとることを。
 いや、失言でしかない。
 でも、友情なんて言われたら、乗り越えたなんて共感できそうにない。
 じゃあいつかは、また、清龍の名前も平気で出せるようになるんか。
 それの何が悪い。
 俺の嫉妬だけちゃうか。
 望んどらんのは。
「他にも友達出来るとええな」
 絞り出したんは無難な言葉。

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