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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して
こばるがソワソワと耳打ちする。
「先輩ガチでモデルになるんすか」
「お前それ面白がっとったら許さんけど」
「いやマジマジのマジで。バスケ特待とかで体育系大学行くとか、あっさりトラック運転手とかになったりとかオレなりに妄想してたんで」
「俺のこと大好きか」
「ガチで半年後地獄っすよ。先輩いなくなんの」
「陸がおる」
「あいつ最近暗いんで」
深刻そうに声を落とし、息を吐くこばるを眺める。
そうか。
美弥に恋しとったか。
「そりゃ難儀やな……」
「オレも恋人作っちゃおっかなー! したら先輩ダブルデートしてくれます?」
「無理」
「聞き捨てにならないにゃー。こばりん、ボクに喧嘩売るとはいい度胸してるに」
「ちがっ、マジで地獄耳やめろ!」
あたふたと立ち上がり、追いかけて来た美弥から逃れるように食堂を出て行った。
そのままついて行くかと思ったが、息を切らして戻ってきた美弥が隣に座る。
こばるの使っていたフォークを向けてくる。
「雑談としては美味しいけど真面目な夢なら、ボク馬鹿にせんよ。ガクちんはルカの道に進むの?」
その刃先を避けるように手で払う。
「一度オーディション受けただけ。結果次第で考えるわ……お前は大学?」
「ボクはねえ、美容系に進もうかなあ。専門とかさあ、女子校憧れるし」
「邪念の塊か」
「年下に夢中なガクに言われたくないにゃ」
「お前……それ卒業まで言うやろ」
シシシッと軽快に笑う美弥に頭痛がする。
でもこうして笑える関係に落ち着いてくれたのは正直感謝している。
色恋絡みで同期との仲がこじれるのは沢山だ。
司……。
放課後あいつは何を話してくれるやろ。
「ねえ、ガク。清龍はいつ退院なの」
蘭の問いかけに数秒考える。
「いや、うーん、わからん。リハビリ次第やない」
「つばるとどっちが早いかにゃー」
「こばるに聞いた方が早いで」
「聞きづらいでしょうから貴方に聞いてるんじゃないの。勘が悪い雄ねえ」
蘭の心底呆れた声に耳まで痛い。
ダメだ。
三年女子に囲まれる朝のスタートはキツイ。
さっさと朝食を済ませてから、足早に寮を出る。
木立を抜けて、見慣れた校舎。
一週間が始まる。
すべてを揺るがす一週間が。