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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して

 一階の階段前の大きな鏡に顔を近づけ、じっと首を確認する。
 朝食抜きの代わりにバッチリとカールした髪は、うまいこと横と後ろをカバーしている。
 コンシーラーとファンデを厚塗りして消した痕は、なんとか存在感を抑えている。
 大丈夫です。
 大丈夫ですよ。
 私の首なんて見る人、学園にはいません。
 友達がいないことでの自信を支えに頷いてから、階段に足を向ける。
「巻き髪可愛いわね。愛しのかんな」
 凛とした声に肩が竦んだ。
 そっと後ろを振り返る。
「……おはよう、ございます。アリス」
「あら、素敵な香り。これは……アンナが使ってる化粧品じゃないかしら」
 クンクンと顔を寄せてきたアリスに、焦って後ろに下がる。
 ルカさんにもらったと云うことは、モデルのアリスも知っている化粧品。
 こんなに薄い香料すらも察してしまうのですか。
 にこりと微笑んで、身を起こす。
「うふふ。男ができたら身だしなみも変わるわね。美弥先輩の羽化も素敵でしたもの。恋愛が人に与える変化はとても興味深い」
「そんな実験動物みたいな目で見ないでください」
 生徒が過ぎ行く廊下で、いつ距離を詰められるか警戒する全身。
 また不意打ちで唇やお尻を触られたくない。
「実験……楽しそう。だったら、貴女の彼氏の目の前で唇を奪ってあげようかしら」
 かあっと脳が熱くなり、急いで教室に向かった。
 アリスの妖艶な視線が首元に絡みついている気がする。
 ああ、もう友達なんかになるわけない。
 じゃあ誰が。
 じゃあ誰を。
 そもそも友達ってなんでしょう。
 どうしてみんなそう簡単に他人と距離を縮められるの。
 そこにあるのは優越感や憧れや性欲だけじゃないの。
 ううん、わかってます。
 美弥さんと岳斗さんのように。
 こばるさんと陸さんのように。
 尚哉さんとマリケン先輩のように。
 たやすく千切れることの無い縁の存在を私は知ってます。
 縁……。
 まっさらな白い状態から、どうやって紡いだらいいんでしょう。
 教室に入り、混線するラジオのように雑談に花を咲かせるクラスメイトを眺める。
 同じタイミングで入学してきたのに。
 この人たちはどうやって可能にしたんでしょう。
「おはよ、松園さん」
 明るい声に、ハッとする。
 三鷹恭平だった。
 そういえば、入学してから何度か声をかけてきた。
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