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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して
顔もクラスメイトの中ではなんとか把握している数人の一人。
隣席だからですかね。
「おはよう、ございます」
「余計かもしんねえけどさあ、華海都寮一年って松園さんだけでしょ、今。大丈夫?」
「えっ」
恭平が苦笑して耳を掻く。
「いきなりキモいよな。わり。つばるのこととかあんま詳しくねえけど、村山が転学してさ、多分色々悩んでんじゃないかなって……思っただけ。文化祭も近いし、松園さんは転学すんなよ」
「おい、三鷹ぁ。何口説いてんだよ」
「うっせ、倉場。あっち行け」
優しい余韻が漂っている。
ああ、すごい気遣いだ。
私を心配している人が寮の外にもいたなんて。
倉場と呼ばれた長身の野球部っぽい男にグリグリと肩を小突かれながら、なんとか笑顔をこちらに向けた。
「別に! なんもねえなら忘れて」
「いえ。ありがとうございます。嬉しいです」
ああっと。
言い過ぎましたか。
何人もの視線の圧に目線が泳ぐ。
そんなに注目するような存在じゃないのに。
ぺこりと頭を下げてから席に着く。
だって視線の中には悪意も混ざっていたから。
つばるのボス猿っぷりはともかく、恭平を想う人も中にはいるのだ。
ああ、面倒です。
単純な厚意にお礼を言っただけなのに。
もう、だから嫌なんです。
小学校の頃はまだ、男女の邪な感情なんて少なかった。
今はあまりにも母数が大きすぎる。
早く寮に戻りたい。
「ねえねえ、松園さん」
女子の声に、バッと顔を向けると喋ったことのない栗色のショートヘアの子。
小柄で、いつも何人かの女子と話してる放送委員の。
名前、名前なんだっけ。
「ごめんね。恭平の声聞こえちゃってさ。うちもちょっと松園さんのこと気にしてたの。なんか、あの寮って特別なんでしょ。つばるくんとか村ちゃんとか結構アクティブだったからさ、話しかけやすかったけど。松園さんってこう静かなのが好きなのかなって遠巻きに見てて。でも、その、本当友達になれたらって思うから」
今度は花束を差し出されたように胸が高鳴ってしまいました。
なんて、純粋な、言葉の花束。
「え、あ……」
「あっ、そっか。あの、うちは江川ね。ガーちゃんって呼ばれてるから、それでもいいよ。かんなちゃんって呼んでもいいかな」
「あ、ガーちゃん……はい。よろしく」
「ねえもう本当声可愛い。前から話しかけたかったの!」