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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して

 今日は、なんのサプライズですか。
 江川の声に誘われたように数人の女子が集まってきて、それぞれの名前を確認しながら会話が弾む。
 寮の部屋はどんな感じなのか、華海都サークルは本当にあるのか、いつも集会にだけ顔を出す管理人の名前は、聞きたいことは山積みのようでした。
 一つ一つに答えながら、表情がほぐれていく。
 きっかけを作ってくれた恭平を横目で見ると、小テストに向けて冊子をめくりながら、さっきの倉場と談笑していた。
 感謝ですね。
 そういえば、寮に初めて来た日、陸さんが案内してくれたんでした。
 それからこばるさんに、美弥さん。
 暴露会にイベントの数々。
 人が人と近づくというのは、思っているより異質なものではないですね。
 チャイムが鳴って女子たちが解散してから、ふうっと小さく息を吐く。
 あと半年で、本音で話せる友達ができるといいのですが。
 きっと会話の積み重ねと、心の寄り添いが織り成していくのでしょう。

 放課後、声をかけた司は待っていたとばかりに素直についてきた。
 体調はいつもよりは良いようで、表情も柔らかいように見える。
 でも、目が違う。
 岳斗は後ろを歩く司の足音に耳をそばだてながら、部室棟に入った。
 かんなと話した茶道部の空き部室を目指す。
「司も懐かしいんちゃう」
「二年の頃は清がここで吸ってたよね」
 机の焼け跡をなぞりながら、司が呟いた。
 部活の用具を取りに来る足音が廊下に響く以外は、静かな空間。
 椅子も出さずに机にもたれかかって、窓の外の森を眺める。
 たとえ沈黙でも居心地の良さがあるのが司だった。
 でも、今はどうやろ。
 話さなきゃいけないことは脳を駆け巡るのに、何から切り出せば良いのかわからない。
 数十秒の間の後で、司は肘を摩りながら、ぽつりと言った。
「清は、車椅子で受験を受けることになるかもしれない」
 見舞いに一番顔を出している司だからこそ、知り得る回復状況。
「そか……同じ大学受けるんやろ」
「うん。でも共通試験までに外出許可が出ると良いんだけどね」
 風に揺れる木漏れ日が二人の足元を照らしている。
「司。俺、つばるにあの日、お前が何を作ったか聞いとるわ」
 スローモーションのように、ゆっくりと司が顔をこちらに向けた。
 ああ、こんなに虚ろな目をしとったか。
 厨房に立つ司との別人ぶりに寒気がする。
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