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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して
最初は司が唸っているのかと思った。
空気を吸いながら笑っているのだと気づくのに、時間がかかった。
「は、は、は。ああ、ああそう。つばるくんが。ああ、そうか。はは、申し訳ないことしたなあ、本当に。彼も信じて口を開いてくれたのにねえ」
心底可笑しそうに、肩を震わせて。
「ねえ、ガク。信じられる? 僕、親友に」
「それ吐いたら、司は楽になるんか」
虚空を見つめていた司がハッとする。
それから笑っていた口元が少しずつ下がっていく。
見てられへんな。
「あ、ああ。そうだ。そうだった。清と約束したんだ。ガクには言わないって。でももう夢が続きすぎてるから、そろそろ時効なんじゃないかって。違う。えっと、ガクは大学いかないんじゃないかって話してたんだ、清と」
綺麗に剃られた頭を撫でながら、独り言のように。
急いで話題を変えるように早口で。
岳斗は足を組み直して、ため息を吐いた。
「まだ決めとらんよ。司と清は、よお頑張っとるな。毎日過去問やって偉いわ」
「でもそれ終わっちゃってさあ。続けたかったのに……終わっちゃってさあ。清が寝坊するんだよ。夜に余計なことしてるからだよ。入院費用だって返済するなら大学は奨学金とれないと詰んじゃうのに。浪人になったら出ていかないとだけど、留年なら寮に居続けられるのかな」
「すまんけど、俺が卒業した後に清があそこにおるんは無理」
「あ、はは。そうだよ、ね……当たり前だ」
何が。
何が当たり前なんって。
尋ねんのは一瞬。
乾いた唇を舐めても、その質問は出せなかった。
「つばるくんがね、友達が理解できないほど悪い方に行っちゃって、変わっちゃったらどうするって聞いたときに言ったんだ。葬るって」
「司」
手を伸ばして掴んだ肩を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
何をされたのか理解できないように棒立ちの司が、段々と顔をしかめて、涙が頬に伝った。
そっと背中に手が回される。
壊さぬように、ただ包み込む。
しゃくりあげる嗚咽だけが空気を震わせた。
よしよしとうなじから背中を撫でる。
「早く言え。限界だって。こんなになるまで俺頼らんとかおかしいって」
「だって……ぅく、だって、ガクには話せないことばかりで」
「話せなんて思わんし。言いたきゃ聞くけど。手放しに俺はお前の味方だし」
腕に力がこもったかと思うと、堰を切ったように泣いた。