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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して
「守り合えるのが先輩の友情なんですか」
今から自分が何を言おうとしているのかがわかって、急いで歯を噛み締めようとしたけれど、もう遅い。
あの長い黒髪が、自分を汚したあの存在が暗闇の中で笑っているのが浮かんで消えない。
肩書きで呼ばれたのが久しぶりだったので、数瞬それが自分に向けられていると思わなかった。
「友達だったら、影で何をしていようと無条件に許せるものなんですか」
話題が急に飛んで、握った手が逃げようと動いた。
無意識にそれだけは離しちゃいけないと力がこもる。
かんなは引っ込めようとした手を涙目で凝視する。
ああ、まずいことを言ってしまった。
友情について説教する?
この俺が?
アホすぎるって。
「許さんかったよ」
あまりに濃い怒りが滲んだ両目に、空気が張り詰めている。
間違えんな。
これは雑談の延長じゃない。
今、かんなは、それを、話したがっている。
ひた隠してきたそれを。
「あ……何、を」
固く閉ざした心の底から敵意をむき出しにして。
俺を、信頼できるか、見定めようとしている。
かんなは今しがたの言葉を脳になんとか染み込ませるように、瞬きしながら荒く呼吸をする。
「俺は、嘘ついた親友を許さんかったよ」
ひゅっと息を呑む音がする。
みるみる溜まった涙は、落ちるのを待ち望むように波打った。
ポロリと流れてからは堰を切ったようにボロボロと溢れる。
病室で話した清龍の顔が浮かんで、目の奥から熱がこみ上げてくる。
「ぜ、全部……聞いたん、ですか」
怯えてか細くなった声に、なんとか奥歯の力を抜く。
すれ違ってはいけない。
違う方向に走り出してもいけない。
「何があったかは聞いてない。けど想像できんほど、めでたくもない」
誰も彼もヒントを差し出してくるからな。
目の前の彼女も含めて。
「でも……」
固く握り締めているのに、かんなの指先は冷えたままだった。
「でも、じゃあ、なんで、まだここにいるんですか」
太陽が分厚い雲に隠れたようで、壁に走った光が端から消えていく。
蛍光灯の明かりだけになった室内は、無機質な空気で二人を包む。
静寂が余計に感情を際立たせた。
「だって、バレてしまったら終わってまうのに」
ああ、そんなことを思っていたのか。
何を予想していたわけでもないけれど。
「終わらんよ」