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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して
長い横髪がはらり、と頬に滑るのを感じて、でもそれより何倍も伝う涙の方を拭わないといけないのだけれど、大きな指に包まれた手はそんな瑣末なことのために解放されたりしない。
今しがたの言葉に世界が数度ほど傾いたまま戻らない。
「っつーか、ちょ、起き上がり」
そんな歪な世界を無理矢理にでも正しくするように、岳斗が引っ張り起こした。
「一回ちゃんと話そ」
ベッドの上で向かい合って、尚も止まらない涙が太ももにハタハタと落ちていく。
情けない。
この人はせっかく全身で話をしてくれようとしているのに。
雲が切れて、陽光が部屋になだれ込んでくる。
日が短くなりつつある秋の太陽は、夏よりも暖かく、少し遠い。
せめて今のうちにと髪を耳にかけた。
「言いたくないことは一つも言わんでいい。ただ、今から俺が本音を……あー、ぶつけさせてもらうわ、先に。したら、かんなが言いたいこと全部ぶつけて」
長い足を交差して胡座をかいて前傾すると、両手を私の体の両脇に着いて、じっと目を合わせる。ベッドの支柱の軋む音の後に、柔らかな声が続いた。
「出会って半年。半年? まじか。たった半年て思う。正直、入学前からの縁全部に嫉妬しとる。アホみたいに襲撃してきたあいつらも全員、かんなの過去を知っとると思うと、胸が痒くて仕方なくなるくらいな」
シーツを伝って手のひらの熱が私の全身を包んでくれているんじゃないかってくらいに、熱い。
「付き合って一ヶ月半か。短いよな。けどもう前の生活思い出せんくらいに、かんなが中心になってる。普段何思ってんのか、学園で何があったのか、俺がそばにおらん時間のことは全部知りたい。全部聞きたい。秘密なんて一つもして欲しない。けど、無理に聞く気は一ミリもない」
ああ、変わらない。
本当にこの人はまっすぐに全てを伝えてきてくれる。
「ただな」
とてつもなく大きなものを飲み下すようにググッと下を向いた後で、鋭い眼光となって両目がこちらを見上げる。
「俺以外の男と二人きりになんなっつったの破ったんは、ものごっつ理由知りたい。いや、言わんでええ。言わんでええし、知らんでええけど、勝手に想像が膨らんでしんどい。それよりマシであってほしい。けど軽いわけない。屋上から人落ちとるからな」
段々と抑え切れないほど熱を帯びてきた声色に、涙の栓が閉じていく。