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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して
冷静に。
冷静にな、錦岳斗。
焦るように舌の上に溜まった不満たちを飲み込んでから、身を起こす。
はあっと長く息を吐いて、目を閉じて感情を落ち着かせてから腕を組んだ。
「うん。俺らしない。ダメだ、これだけは言おう」
怒りが消え去って、戸惑いに揺れる瞳を見つめ返す。
「つばるじゃなくて俺を頼ってくれ」
キョトンと音がするように微かに首を傾げる。
「それは、えっと、アリスの」
「だけじゃない。つばるも司も知っとることを、俺だけ知らんかった。おかしいやろ」
はい、格好悪い。
墓場まで持ってけ言うたのに。
見てみ、軽蔑されるわ。
「あ……ごめんなさい」
「それこそ終わると思ったからか。ああ、答えてくれてたなもう。っはは、アホすぎ。俺もやし、かんなもむっちゃアホ」
「なんっ、そんなこと……」
「たまには怒りをぶつけろや。俺をサンドバックにしろ。勝手に抱え込んで潰れられて立場ないやん」
正論でしかない岳斗の言葉に、心の底から反論したい気持ちが噴き上がる。
「できるわけないでしょう!」
何を、冷静に客観的な言葉で、あれほどの地獄を知らないくせにと。
でもその地獄を耐えたのは、この目の前の人を失いたくないためであって、責められるいわれはないはずだと幼稚な対抗心が流れ出す。
「そもそも、岳斗さんは、それこそ、親友だったじゃないですか」
「彼女よりダチ優先する思ったん?」
「じゃなくてっ、だって、汚らわしいにもほどがあるじゃないですか」
ああ、バカんな。
黙った方がいいですよ、貴方。
「岳斗さんにも触られたことのない場所を、あんなにも気持ち悪い時間を、どうして話せるんですか……私の自業自得が原因なんですよ」
「んなわけないやろ」
ばちんと平手打ちされたかのように、短い否定に目が醒める。
組んでいた手を解いて、私の右手を優しく掴んだ。
「あのな、仮に望んで近づいたとしても、泣いてトラウマ残すようなことした方が百悪いで」
「でも」
「おお、なんでもぶつけてこい。全部反論したるわ」
おどけた口調に笑っていない目が、存在を何倍も大きく見せる。
「私が誰にも相談をしなかったから」
「脅されてたんやろ。先輩相手やし」
「嘘だったのも見抜けなかったから」
「騙す気で来る相手に敵うわけない」
「途中で逃げ出すことも出来たのに」
「ほんまに出来たと思ってないやろ」