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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して
振り返れば長い間、嘘に苦しめられていた。
でもきっと、それは目の前のこの人も同じ。
親友と彼女に同時に嘘をつかれて、隠し事をされて、想像以上の苦しみを耐えてきたはず。何度もベッドで垣間見えた深い深い怒りがその証拠。
無意識に首を押さえてしまった。
そのわずかな動作も見逃さずに、眉を歪めた後で優しく抱き締められた。
「ばれたん、それが原因やろ」
高水さんに髪を退けて覗き込まれた瞬間が脳裏に浮かぶ。
「あ、う……はい」
ぎゅうっと腕に力がこもって胸が圧迫されたので、ポンポンと岳斗の背中を叩く。
「苦しいです」
「ごめん」
両肩に手を添えて離れると、長い深呼吸をしてから、下を向いたままの岳斗から小さな声が漏れた。
「失いたくないなあ……」
投げる言葉を迷わせるその吐露に、ただ唾を飲んで次の言葉を待った。
右手で口元を撫で下してから、力なく笑った。
「やっとこんな話してくれるようになったのにな。周りのつまらん声気にして、別れるとか絶対言わんでほしい」
最初の話題を指しているのだと、呼吸が浅くなる。
確かに自分の頭の一部を占めていた考え。
釣り合わない。
この人に、私が釣り合うはずがないと。
ルカさんの撮影現場でまざまざと見せつけられた高い壁。
高水さんたちの羨望と疑念。
「いや、俺の考えすぎか。自意識過剰?」
返事がなかったからか、少し慌てて手を振るので、急いで首を振る。
「いえ……いいえ。確かに、それは考えてました。高水さんて背が高くてスタイルが良くて、運動神経もいいじゃないですか。私よりもずっと岳斗さんの隣が似合」
「まだわからんの?」
心底呆れた低い声に、ハッと口をつぐむ。
長い指で顎を緩慢に掻きながら、虚しい笑いが漏れる。
「か、鎌倉でデートした時もそうです。他の綺麗な女性たちに、ずっと、ずっとありもしないことを言われているようで……だって、岳斗さんが私のどこが好きかも私にはわからなくて」
「最初は一目惚れやったよ」
「えっ」
思い出して照れるようにニヤつく口元が、優しい声で包んでくれる。
「んで、新入生バスケん時につばるが気に食わんくて、あいつが固執しとる相手ってことで興味がさらに湧いた。コテージで二人きりになって、いっつまでも話せそうな居心地良さに確信した。俺以外に惚れとるやつが何人もいて、早よせんとって思った」