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もうLOVEっ!ハニー!
第21章 眩さから逃げ出して

 いろんな感情を素直に言葉に乗せて伝えてくれるところ。
 私が何を考えているのか汲み取って導いてくれるところ。
 数え上げてみたらきりがないほどに、魅力が見えてくる。
「伝えきれないですよ……」
「十分。今すっげえ、噛み締めてるわ。ありがと」
 やけに真剣に言いながら天井を見上げるので、どんな顔をして待てばわからずに笑ってしまう。ああ、何度も笑わせてくれる。
 窓の向こうで太陽が完全に沈んで、赤い光が紫の空に覆われていく。
 カラスが何羽か歌うように鳴いている。
 それを聴きながら、岳斗の緩んでいた頬がすっと引き締まり、真顔になった美しい顔がこちらを向いた。
 数秒で温度を変えてしまう表情に、ピリリと首筋に緊張が走る。
「十二月になったら、清が退院する」
 とうとう名前を出したことに、さっきまでの楽しい過去に戻りたい気持ちに襲われる。
 けれど、これだけは避けれないと。
 敢えて、話題を切り出す側に回ってくれたことに向き合わないと。
 真剣な目から逃げないように顎を引く。
「つばるは、こばるの部屋に移るらしいわ。三階は司と清だけに戻る」
 まずは淡々と事実を述べていく。
 その先の言葉を、早く早くと急かしてしまいそうになるのを我慢する。
「けど、つばると違うて足の後遺症がどこまで残るかわからんから、隆人は階段を使わせんと思う。まだ話には出とらんけど、一階の空き部屋に入るんちゃうかな」
「それって」
「つばるの部屋にならんことを祈るわな」
「そんなのって」
「仮の話でしかないけどな。ありうる未来として、考えんと。かんながそれを拒否したとして、理由は何にする? むずいやろ」
 クリーム色の壁から紫の窓へ、途方にくれた両目が視線を彷徨わせる。
 窓辺の百合はもう枯れたので、空の花瓶が置いてある。
 握りしめた両手が太ももにググッと刺さっている。
 まだ、九月。
 でも、その日は必ずやってくる。
「今のかんなとつばるの関係やったら、つばるが元の部屋に戻るもありと思うんやけど。先に相部屋で話がついとるからな。村山……薫? あいつが住んどった部屋って案もあるか」
「帰ってくるんですね……この寮に」
「あいつが自主退学でもせんかぎりな」
 もしくは、長引いてくれればいいんですが。
 ああ、考えられません。
 目の前の部屋なんて、たとえ鍵を閉めても、無意味ではないですか。
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