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もうLOVEっ!ハニー!
第22章 三角の終焉

二個目を食べ終えて、お茶を飲む喉をつい見てしまう。
大きく息を吐いてから、机に力なく崩れる。
「あー……こっえー」
文字通り頭を抱えて飛び出た本音に、つい頬が緩んでしまう。
食べかけのおにぎりを置いてから、その背中を手の甲で優しく撫でる。
数秒ほど静止していた背中が、跳ね上がるように身を起こした。
「ちゃう! んな話しに呼び出したんじゃなくてな」
「十分重要ですけどね」
「昨日の続き。部屋のことなんやけど……」
清龍さんが退院した後のことですね。
自然と下がる口角を偽ることができない。
「結構マジなんだけど、俺とアパート住まん?」
普段瞬きというのは意識をしないうちに何千回と視界を奪っている。
けれど、今はその瞬間の暗闇の煩わしさがフラッシュのようにわかりやすく、ぴりりとうなじを刺激する。
「……へあ?」
漏れ出た脱力した声に急いで口に手を当てる。
衝撃を生み出した本人は、至って真顔でこちらを見つめている。
「隆にいに冗談で俺の部屋にって話したんやけど却下でな。寮におる限りは部屋移動には正当な理由が要るやろ。で、移動できたとしても廊下とか回避できんし。したら、もう出たらええやん」
窓が軋む小さな音が気になって仕方ない。
秋風の強さは音でわかります。
「出る?」
それは、それは、あまりにも突飛な案に思えました。
出て、どこに行く?
アパートを借りるお金は?
名義は?
保証は?
次々出てくる否定に繋がる疑問に脳が浸かる。
「あ、ゆうても三か月だけな」
「えっ」
「清が卒業するまでの間だけ。その後は俺一人に戻って、かんなは寮に。って案」
ひとまず全ての疑問は置いておいて、具体性が増す。
三か月。
それなら、可能かもしれないと過った。
平穏が手に入るなら、すべてのデメリットを黙らせられる。
けれど、本当に?
「……旅行どころか、一緒に住むなんて。想像つかなくて」
「ほんまにな」
「ふ、ふふ。夜通し考えてたんですね?」
「バレる?」
「わかりますよ。嬉しいですけど」
「ルカと同じ会社の所属になったら、在学中からギャラもちゃんと出るんやて。前に話したけど春休みのバイト代が二十万近くある。退院までまだ日もあるし、金は用意する。担任に聞いたら寮から出るんは可能らしい」
得たばかりの知識は舌にも耳にも馴染まない。

