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もうLOVEっ!ハニー!
第22章 三角の終焉

 それは、それは純粋な殺意でした。
 すべての光を遮断して深い穴に落ちてしまうような冷えた空気が下りてきて、つい、その腰を両手で掴んでしまった。
「なに? 急に」
 急にはそちらの方です。
 はっ、はっ、と気づくと息が上がってしまう。
 これは……なんだ。
 つま先がギュッと縮まって、膝が震えだす。
 細い手首を、大きな手が掴んで、ゆっくりと引き剝がす。
「こそばゆいわ」
 なら笑ってくださいよ。
 いつもみたいに目を細めて、愉快そうに微笑んでくださいよ。
「だ、ダメですよ……?」
 声が裏返って、歯が鳴りそうなほど顎が痙攣してる。
 緩慢な動作で元の位置に戻された手が離れぬように、急いで指を絡ませる。
「だから出ていかないかんの。俺は」
 目の奥が熱く煮えたぎるようだ。
 今、自覚しました。
 私が、この人の日常をぶっ壊したのだと。
 この人の帰る場所を、側にいた人を、二度と触れ合わさぬようにしたのは、四月にここにきてしまったこの愚かな自分のせいだと。
 学園でも寮でもいなくてはならない太陽のような錦岳斗先輩を、こんな結論に追い込んでしまったのは、三階に行ってしまったあの日のせいだと。
 あまりに大きな事実に押しつぶされそうになる。
 どこかで、このまま寮で一緒に穏やかな日々を過ごして、卒業式を迎えるのだと思っていました。
 あの悪魔が退院した後の生活を考えないようにしていたのです。
 いえ、もし廊下で会ったとしても、今は隣で守る人がいるから大丈夫だと、思い込んでいたかもしれません。
「なーに泣きそうな顔して」
 ふふっと、いつもの笑顔で頭を撫でられる。
 でもその手の先で、頭の奥で、どれほど考え決心したのか。
「絶対明日結果出さんとな!」
 拳を握って、道化のように両手を振り上げて。
 それから静かに長く息を吐いて。
「まともに寝れる気せんから、添い寝してくれる?」
 ああ、まったく本当に、この人は。
「……もちろんです」
「予鈴鳴る前に校舎戻ろ」
 手際よく片付けて、お茶を抱えて扉に向かう背中が滲んでいく。ぐっと手の甲で両目を拭って後を追う。
 やけに白い廊下で、校舎の方から光が差している。
「岳斗さん」
 ようやく震えの止まった顎が開く。
「ごめんなさい」
 遅すぎた言葉が静けさに溶けていく。
「ごめんなさいぃ……」
 言葉のない抱擁に涙腺が狂いました。
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