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もうLOVEっ!ハニー!
第22章 三角の終焉

 管理人室の扉に小さなノックが響いたのは木曜午前九時のことだった。書類整理に眉を潜めていた柳隆人は、湯気の消え失せたコーヒーを一口舐めてから来客を出迎えに立ち上がる。
 この時間ということは職員か、サボりの学生か。
 錆びた扉を開いてみれば、難解な相談があると頬に書いてある汐里の顔に、つい小さく噴き出してしまった。
「おはよう。朝食の配達かな」
「ならよかったけどよ。ちっと心配事でな」
 スリッパの先を部屋の中に向けて招き入れる。
 スキンヘッドを掻きながら、食堂の主が部屋の中央で振り返る。
「岳斗から外泊許可の申請は来たか?」
「ううん。特には」
「ああ、そうか」
 かんなとの旅行話以来、そもそも管理人室に用はなかったはずだが。
 隆人は顎を擦りながら首を傾げる。
「何か聞いてるの?」
「いやー。そうだな。昨日の朝にな、質問されてな。何日まで可能かとか、理由はとか、仮にだが……寮を出るような話が気になって」
 木枯らしが窓の外の垣根を揺らす音が聞こえる。
 せっかく、朝の掃き掃除で片付けた落ち葉も、今頃無意味になっているだろう。
「出る?」
「随分前に居ただろ。卒業前に出てった奴も何人か。そもそもここに来た時点で自由を望んでる若いのが、バイトも始めりゃ選択肢が増えるもんだからよ」
「ガクが?」
「あー……仮定の話だがな。細峰にモデルの仕事紹介されてるだろ。自立も視野に入れてんじゃねえかな」
「ルカはここにいるのにね」
 連日の寝不足がたるませている瞼を擦る。
 乾燥も相まってガサガサの感触にため息が出る。
「そうか。もしそうなら寂しくなるね」
「不自然だと思わねえか」
 座る気のない汐里が、ポケットに手を入れながら視線を重ねる。ぶっきらぼうながらも、真剣な声が腹まで響いてくる。
「あいつが、今、だぞ」
 暗に松園かんなのことを含めているのに、気づかないふりをするのもおかしな話だ。
「そうだね。留年すらしたがってたのにね」
「学生の希望は尊重するけどよ。俺も今は司のフォローで手一杯だ。申請が来たら相談に乗ってくれ」
「したいならとっくに来てるよ」

 汐里が出て行った扉にもたれて、床模様に視線を這わせる。
 親友の清龍の見舞いに全く来ていない岳斗。
 かんなと同室に、と冗談で言っていたのが過ぎる。
「んー。僕は何か間違えたかなあ……」
 強風が建物ごと軋ませた。
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