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わたしの心が消えるとき
第5章 それぞれの夜
ほのかの家には、父親がいない。

母親は、シングルマザーだ。
兄弟もなく、ふたりだけで暮らしている。

父親がどんな人だったか、ほのかは何も聞かされていない。
わかっているのは、自分が望まれて生まれてきたのではない事…

住んでいるのは、2LDKの賃貸マンション。
一応、自分の部屋は与えられているが、あまり居心地が良くない。

ほのかは鍵を開けて、玄関に入った。
「ただいま…」
返事がない。

リビングに入ると、母がソファーの上に寝そべって、いびきをかいていた。
テーブルの上には、ビールの空き缶が、いくつか転がっている。

部屋の中は、ひどく散らかっていた。
取り込んだ洗濯物も、放置されている。

ほのかは黙って部屋を片付けはじめた。
母は、まだ起きる気配がない。

冷蔵庫の中を覗いてみた。
酒のつまみ以外、ほとんど何も入ってない。
今夜も夕食はカップラーメンになりそうだ…
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