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わたしの心が消えるとき
第5章 それぞれの夜
午後から降り出した雨は深夜になっても止まず、さらに激しさを増していた。

清華女学院の校庭にも降り注ぎ、霧のように周りの風景を霞ませる。
防犯の為に、校庭の端に設置されている街灯の明かりも、滲んでいた。

その弱い光に照らされて、ふたりの女生徒が校舎に向かっていく。

先頭を歩く、水色の傘の少女。
その後ろをついていくピンクの傘の少女が、おずおずと
「莉奈さん…本当にやるんですか?」

莉奈は振り返った。
「何?あんたまで私に逆らうの?」
「そんな…逆らうなんて…」

莉奈は、少女の抱えている紙の束を見ながら
「とにかく、それ全部貼るまで帰さないからね」
「あっ…」
急に少女が立ち止まった。
前方を凝視している。

男がひとり、校舎の入口の前に立っていた、
黒っぽい服を着ていて、背が高い。
傘も差さずに、じっとこちらを見る姿は不気味だ。
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