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わたしの心が消えるとき
第5章 それぞれの夜
廊下の右側にダイニングキッチン、左側にリビングがある。

真由は何気なくリビングを見て、思わず足を止めた。
「どうしたの?」
渚が振り返る。
真由の視線は、仏壇のふたつの遺影に注がれていた。

渚もそれに気付いて
「お父さんとお母さんだよ」
「ちょっと…見ていい?」
「うん」
遺影に近づく。

渚の母は、黒い枠の中で微笑んでいた。

すごく綺麗な人…
テレビに出てる女優でも、こんな美人はあまりいないよ…
清楚な感じで…でも華やかで…
渚もこんな感じになるのかな…

父親はそれほどハンサムでもないが、少し垂れた目が優しそうな印象だ。
無造作な髪型が、良く似合っていた。

「渚のお父さんとお母さんって、どんな人だったの?」
「別に…普通の人だよ」
無関心にそう言うと、渚は階段に向かって歩きだす。
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