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わたしの心が消えるとき
第6章 偽りの恋
病院の冷たく光る廊下を、渚と真由は歩いていた。
病室の前で立ち止まった。
「ここ…だよね?」
プレートの名前を見ると…
『伊藤博文』
真由は吹き出しそうになった。
そっとドアを開けると、笑いをこらえながら
「伊藤博文さぁん、生きてますかぁ?」

男はベッドに寝たまま、顔をこちらに向けた。
「その名前を言うなよ。俺は祥だ」
「何だ、元気そうじゃない」

真由は、見舞いのフルーツをサイドテーブルに置いた。
「そうでもないよ」
祥は、力無く言った。

渚は、初めて口を開いた。
「悪いけど、ほのかは来ないよ。わかってると思うけど」
「だろうな…」
真由は
「誤解しないでね。ボク達が来るのを止めたんだから。もう会うなって。ほのか、すごく心配してたよ」
「わかってるよ。…俺は夢の王子様だからな」
真由はキョトンとした。
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