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わたしの心が消えるとき
第7章 迷いの海、夏休みの終わり
真由の父、沢田明弘は一階のキッチンにいた。

58歳。男盛りを過ぎ、そろそろ初老に差し掛かる年齢だ。
頭にも白いものがかなり増えてきた。

彼は新聞を読んでいた。
しかしその内容は頭に入っていかない。
彼の注意は、この真上にある、娘の真由の部屋に向けられていた。

この家は古く、造りもあまりよくない。
床のリズミカルな振動、娘の微かな声…
それらが天井から伝わってくるのだ。

明弘は知っていた。
今、娘の部屋で何が行われているか…
しかし彼は動かない。


一ヶ月前の事。

明弘は、夕方から商工会の会議に出席していた。

いつも、半ば馴れ合いで和気あいあいと進む会議だ。
しかしその日は、誰かが出した緊急動議を巡って議会が荒れ、早々に解散となった。
会議の後の飲み会も中止になり、明弘は予定より早く帰宅した。

玄関のドアを開けようとした時、庭の方で音がした。
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