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わたしの心が消えるとき
第7章 迷いの海、夏休みの終わり
「ボク…こんな綺麗な海は久しぶりだよ」

学校のある町にも海はあるが、それは漁港と堤防だけで砂浜はない。
数十年前、台風による大規模な水害があって以来、海は陸から隔離されている。

真由は目を細めて夕日を見ながら
「まだ、お母さんが生きてた時にね…家族で海水浴に行ったんだ」
渚は黙って海を眺めている。
「その頃もう家は生活苦しくて、遊びに行く余裕なんてなかった。行ったのはその一回だけ」

野良犬が渚たちを見ながら歩いて行った。

「弟はまだ泳げなくて、ボクが教えてあげたんだ。それから、バーベキューして…花火して…楽しかったな…」
真由の目に涙が光る。
「でも一番うれしかったのは、お父さんとお母さんが笑ってた事なんだ…うちではいつも、難しい顔してたから」

「真由のお母さんは、どんな人だったの?」
「厳しかったよ。間違った事は絶対許さなかった。よく叱られたな…」
「いいお母さんだね」
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