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第5章 それぞれの夜

少女は焦っていた。
記録が伸びない…

小学生の時は、誰より足が速かった。全国的に見てもトップクラスだった。

ある日、清華女学院の人が家に来た。
『特待生として迎えたい』
貧しい家族にとっては、願ってもない話しだった。

彼女は家族の希望だった。輝かしい未来が、待っているはずだった。

それが…
一年生の終わり頃から、タイムが落ちはじめた。
陸上部の顧問も、部の仲間も、冷たくなった。

なんだ、その程度か。
特待生だからって、気を抜いてるんじゃないの？

そんな事ない！
ボクはまだまだやれるんだ！

しかし、少女は孤立した。
かつては大勢いた友達も、去っていった。

その日も、部活が終わった後、ひとり残って練習していた。
疲れはて、部室に向かってフラフラと歩いていた。
ユニフォームが汗で体に張り付いていた。

気持ち悪い…早く着替えたい…