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富美
第4章 棚からぼた餅

アルバイトを始めて2週間が過ぎた頃、「帰りにご飯食べにいかへん?」と富美から誘われた。秀夫に断る理由などなにもない。

「ここのお刺身、美味しいんよ」

彼女の行きつけの居酒屋でご飯を食べ、外に出ると夜風が気持ち良かった。

「うちでお茶でも飲んで行かへん?」

ほろ酔い加減の富美が秀夫に腕を絡めてきた。

ふらりふらりと10分程歩くと、お寺の横に小さな一軒家が見えてきた。

「暑いわね」

富美は家に入る早々、エアコンのスイッチを入れ、それと同時に着ていたブラウスとスカートを脱ぎ捨て、スリップ姿になった。

お土産物店でも奥の座敷で休憩する時、同じような格好になることはあった。しかし、狭いと言っても座敷と売り場は別れている。そんな時、秀夫は見ないようにいつも売り場に立っていた。だが今は、狭い六畳間。富美の姿は嫌でも目に入る。

「少しくらいなら飲めるやろ?」

富美が冷蔵庫から取り出した缶ビールを2つ持って、秀夫の隣りに横座りしてきた。

「いや、僕は・・」
「1時間もすれば醒めるさかい、飲みなはれ」

プシューと缶を開けた富美がビールを美味しそうに飲んだ。秀夫もつられて飲んだが、苦くてなかなか飲めない。

「ふぁー、美味しいなあ・・」

富美の口元から零れたビールが一筋、二筋と胸元に流れ込んでいく。

「秀夫ちゃん、ええ男やね」
「からかわないでよ」
「違う、ほんまにええ男や」

いつもの口癖が始まったが、この日の富美は様子がおかしかった。
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