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私、普通の恋愛は無理なんです
第8章 サイドストーリー✦香織視点2
 別れを惜しむように、銀色の糸を引きながら部長の唇が離れる。今度は冷たい唇が私の首筋に吸い付く。

「ああ……。部長……」
 それはクネクネと滑るように鎖骨の方に滑る。音はカサカサという二人の服が擦れ合う音と私の熱い吐息。
 私は喉を開けて部長の動きを受け入れる。まるで親犬が子犬の匂いを見分けるときのよう。ゾクンとした甘い感覚が背中を走る。身体中の水分がサーッと溢れ出すような感覚に身体が震えた。
 
 胸元のボタンがプツッ、プツッと外される。エアコンの冷たい空気が喉元から入る。一つ、二つボタンが外されたところで、部長の指がためらうように止まった。

「す、スマン……」
 
「いいですよ。私、里井部長と……」
 また部長の指が私のシャツのボタンを外す。ブラジャーに包まれた胸の膨らみが、部長の冷たく大きな手のひらに包まれる。そのこそばゆい感触に身体の奥が熱を帯び、ジュンと水分が溢れ出るのが気になって腰を捩る。
 
 プルルル……。部長の携帯電話がなった。部長の指先が携帯電話の画面をタップして耳にかざす。その部長の筋張った首筋に唇を当てた。
 
「……はい、里井です……ええ、今、……大丈夫です。…………はい、……六時ごろ伺います」
 
 電話は警察からだということはすぐに見当がついた。
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