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メンタリズムな恋…
第9章 先生、逸れないでね



怯えた私は小さく頷く。

お母さんが電車やバスではお喋りをせずに静かにしろと時々言う。

その言い付けが守れないとお母さんが不機嫌になるけど大人しく良い子にしてたら機嫌の良いお母さんがケーキとか買ってくれる。

単純に、今はこの悪魔を怒らせてはいけないと3歳の私は考える。

誘拐とかまだわかってない。

ただ良い子にして悪魔の言うように大人しくしてればお母さんが迎えに来てくれると期待する。

男は私を車の助手席に乗せたままモールの駐車場から車を発進させた。


「お兄ちゃん…、どこに行くの?」

「黙ってろっ!」


こそこそと内緒話をするくらいの小さな声で聞いたのに怒鳴られる。

ビクンと身体が強張り石のように固くなる。

目を見開いたまま3歳の私は恐怖から金縛りに合い車のシートに踞る。


お母さん…。

お母さん…。

お母さん…。


そればかりを考える。

私はお父さんに振られた子…。

だからお母さんに捨てられたのかもと勝手な想像が小さな私の胸の中で不安と共に膨らむ。

助けて…。

そう叫びたい声も男から受けた脅しに負けて迂闊には叫べない。

気付けば車は見知らぬ倉庫の中に停まってる。


「降りろ…。」


不機嫌な男が命令する。

全く自分の状況がわからない。

そんな私が車から降りると


「宏伸…、お前は何をやってる!?それに、その子は誰だっ!」


とヒステリックに叫ぶ大人の声がする。

お父さんよりも年老いたおじさんが私と悪魔を驚愕した顔で見てる。


おじさん、助けて…。


私がそう言う前に


「うるせえよっ!俺は俺の好きにする。自分が大切なら、これ以上は俺に構うなっ!」


と悪魔は強気でおじさんに叫ぶ。


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