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メンタリズムな恋…
第10章 先生、デートですか?
日本に帰って来て…。
「アメリカから?」
帰って来てしばらくは神戸に居たの?
不思議そうに先生の顔を覗き込む私の顔を先生の手が優しく撫でる。
「俺、生まれてすぐは中国に居たんだ。」
初めて先生が自分の事を語ってくれる。
「中国に?」
「俺の母親が…、ちょっと変わった人だった。」
先生のお母さんは幼い先生を連れて中国のあちこちを移動して暮らす。
田舎では農家の手伝いをしたり都会では食堂で皿洗いをする生活。
「ただ笑ってるだけの人だった。」
先生が寂しい表情で笑う。
「お父様は?」
「居ない。母は俺の事を『キリストだ。』という言い方をする人だった。」
「『キリスト』って!?」
「処女受胎…、流石にそれは絶対に有り得ない。」
先生は呆れた顔で昔話から話を逸らす。
「まあ、キリストがメンタリストだった可能性は否定しないけどな。キリストも俺と同じで幼少期はあちこちへ旅をしてる。当時は今のように新幹線なんかない時代だったのにな。」
「それって…、論文の研究テーマとしては面白そうかも。」
幼児期にあちこちへと旅をすればキリストのようなメンタリストになるかもしれない。
そんな研究とかしてみたいと私が目を輝かせる。
「あほか…、そんな研究したらバチカンが発狂して論文を破かれるぞ。」
先生が私の頭を押さえ付ける。
ふざけて笑うだけの時間はあっという間に終わる。
新幹線が新神戸の駅へと滑り込む。
「もう、着いちゃった。」
もっと先生の話を聞きたかった。
先生が私の手を握る。
「行くぞ。」
手を繋いだまま新幹線から降りる。
そこからはバスで中華街へと向かう。