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メンタリズムな恋…
第12章 先生、話が聞きたい
「きっと彼女の記憶は何かが封印しています。それほどまでの恐怖を味わったのだと思います。」
教授がお母さんとお話をする。
「記憶が無くても大丈夫ですか?」
あれほど夢中だった魔法少女に興味を失くした私をお母さんが心配する。
「大丈夫ですよ。この年頃の子供の興味は次々に移り変わります。寧ろ、恐怖に怯えて暮らすよりも何事もなく、いつもの生活に戻れる方がこの子にとっては幸せな事です。」
教授が優しい笑顔を私に向けて私の背中をポンポンと3回ほど叩く。
3歳の私はこのおじさんは優しいから好きだって程度にしか思わない。
「それじゃ、またね。亜子ちゃん。」
「おじさん、バイバイ…。」
僅か1時間ほど遊んだおじさんの事も私は忘れる。
4歳になり夢見る夢子だったはずの私は現実的な子に変わる。
「将来は剛生(ごうき)君と結婚するの。」
サッカーが上手で優しい剛生君は女の子にとても人気がある。
その剛生君のお母さんと久美子ちゃんのお母さんが仲良しだから久美子ちゃんが剛生君と結婚します宣言をする。
「結婚って…、大人になってからちゃんと考えないと後悔するんだよ。」
私はそんな風に子供じみた久美子ちゃんを馬鹿にする子に変わる。
現実はもっと大変なんだから…。
宙を見上げて現実について考える。
しっかりしなくっちゃ…。
心の何処に穴が空いてる感覚を感じる。
小学生になっても…。
中学生になっても…。
大学で河合教授に出会うまで私の心には常にぽっかりと穴が空いたままだ。
やっと河合教授と出会えて心の穴が少しだけ埋まる。
それでも親友の沙莉奈に
「メンタリストとか夢見てないで、もっと現実を考えた方がいいよ。」
とお説教を受けると心の穴がまた開く。