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メンタリズムな恋…
第16章 先生、もう探せない



あの下に行けば神の子が居るかもしれない。

そう考えてしまう私はここから駆け出し、その場所へ行きたいという衝動に駆られる。


「本当に…、綺麗です。」


景色を見ずに私を真っ直ぐに見る片桐さんがテーブルの上で私の手を握る。

私が魅せられた幻想はあっという間に消え失せ、よくある夜景へと姿を変える。


「元気ですか?」


爽やかな笑顔で片桐さんが聞いて来る。


「うん…。」


私も無理に笑顔を作る。


「嘘はいけません。僕はメンタリストではないが刑事です。嘘を見分ける事くらいは出来ますよ。」


片桐さんに叱られる。

心に穴の空いた私は食事すらしなくなり、沙莉奈が私の面倒を引き受ける事になった。

誰もが今の私を心配する。

私がふらふらと何処かに消えるのではないかと片桐さんが私の手を強く握る。

その優しい手から逃げたいとか考える私は思わず手を引いてしまう。


「大丈夫ですよ。だって…、もう私に怖い事は起きないのだから…。」


独り言のように呟く。

片桐さんが悲しげに顔を歪ませる。


「三好さん…。」


片桐さんもわかってるはず…。

私にはもう2度とあんな事件は起きない。

片桐さんが私を守る理由はなくなった。

石井は2度と現れない。

逮捕された石井は完全な黙秘のまま警察の拘留中に食事だけでなく水すら拒否をするようになる。

その為、元々、精神疾患がある扱いの石井は警察病院の方へと移送になる。

その病院で石井が自殺した。

新聞に片隅に小さく載った事件…。

石井が何故、大学教授を狙ったのかが謎のままの扱いで事件は幕を閉じる。

私と幸之助の存在は最後まで伏せられる事になり事実は闇へと消え失せた。


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