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メンタリズムな恋…
第17章 先生、未来へ向かおうよ
寒い日の肉まん…。
夏の暑い日に私は食べた。
あの日と変わらない味がする。
貴方のお母さんが好きだった味…。
「亜子…?」
沙莉奈が私の顔を覗き込む。
慌てて肉まんを飲み込み沙莉奈に笑顔を向ける。
「行こうか…。」
手土産の肉まんが冷めないうちにと沙莉奈を連れてタクシーに乗り込み移動する。
海が見える丘の上へ…。
タクシーが停まれば沙莉奈が目を丸くする。
「ここって…、まさか今から真冬の肝試しとかするつもり?」
お化け屋敷とか苦手な沙莉奈が露骨に嫌そうな表情を浮かべる。
「ここに肉まんのお土産を待ってる人が居るの。」
「幽霊って肉まんとか食べるの!?」
恐怖のあまりに沙莉奈が支離滅裂になってる。
「亜子…、関係者以外は立ち入り禁止だよ。」
「うん…、でも、多分大丈夫。」
あの日のように目的の場所に向かえば、あの日の私のように沙莉奈が私について来る。
あの人のお母さんが眠る場所へ…。
あの人に言えない文句をお母さんに聞いて欲しくて私はここまでやって来た。
お母さんが私をどう思うかはわからない。
ただお母さんがあの人をキリストだと煽てて育てたのだから、その責任を取って貰う。
YAMATOの文字が刻まれた墓標の前に立つ。
持って来た肉まんをそこに供えようとする。
肉まんは既に供えられてる。
「このお墓の人が肉まんが好きだった人?もう肉まんが置いてあるよ。」
沙莉奈も供えてある、もう1つの肉まんに気付いて私の腕を引っ張る。
手が震える。
肉まんを並べて先に置いてある肉まんに触れる。
まだ温かい…。
全身に血が滾り出す。