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メンタリズムな恋…
第17章 先生、未来へ向かおうよ
「亜子っ!?」
そう叫ぶ沙莉奈を振り払い私は墓地の中を駆け出す。
「こー…。」
まともに息も出来ないのに右に左にと見渡しながら墓地の敷地を走り回る。
「幸之助っ!」
まだ近くに居る。
理由はわからないのに感覚だけを感じる。
あの温もり…。
私の身体が覚えてる。
「幸之助ってばっ!」
ありったけの声で叫ぶ。
雪が降り始める。
始めはチラチラと…。
やがて私の視界を遮るように意地悪な雪は激しい吹雪へと変わってく。
「こーの…、すけ…。」
雪が私に目隠しをする。
幸之助に会わすまいと私の顔に向かって冷たい雪が叩き付けて来る。
「お願い…、幸之助…。」
私の声だけでも聞こえたなら私のところに来て…。
「亜子っ!」
立ち止まり泣きじゃくる私を探しに沙莉奈が来る。
「亜子…、ホテルに行こう。この雪じゃ風邪をひいちゃうからさ。」
幽霊が苦手なはずの沙莉奈が幽霊のように変わり果てた私を墓地から連れ出す。
ホテルは新しく綺麗で清潔感のあるホテル…。
部屋はツインベッドが置いてある極普通の部屋だがベッドだけで部屋が埋まる安っぽいホテルの部屋とは違い、窓際にはちゃんとしたソファーなどの応接セットが設置されて広さには余裕がある。
しかもKAYANOと看板が出てる。
「ホテル茅野?」
涙が止まった私はぼんやりとして沙莉奈に聞く。
「うん…、茅野のホテルは…。」
「料理が一流で有名なホテルらしいね。」
「亜子も知ってるの?」
「あの人が茅野の社長さんって人を知ってるって言ってたの。」
再び昔話で自分を傷付ける。
沙莉奈が私をベッドの端に座らせてから、厳しい表情で私を覗き込む。
「あの人って…、アメリカで活躍してるって有名になったメンタリストの大和 幸之助さん?」
沙莉奈の質問に息が詰まる。