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メンタリズムな恋…
第17章 先生、未来へ向かおうよ
翌日は沙莉奈と東京へ戻る。
「本当に大丈夫?」
沙莉奈には東京駅から河合教授のお宅に送って欲しいと言ってある。
「うん…。」
河合教授と話をしたかった。
場合によっては院に進む道も諦めようと思う。
実家に帰り、田舎で適当な就職を探すのも1つの道だと考える。
ほとんど話さなくなった私を心配しながらも沙莉奈は河合教授の自宅へと車を向ける。
大学から車で10分ほどで着く住宅街にある小さな一軒家が教授の家。
綺麗に手入れされた小さな庭があり、赤い屋根の可愛らしいお家だと来る度に思う。
教授の奥様が気に入って買った家なのだと教授から聞いた事がある。
今も奥様思いな教授はいつもと変わらない笑顔で私を迎えてくれる。
「寒かったろ?関西方面じゃ雪だったと天気予報で観たよ。もしかすると今夜は関東も雪かもね。」
沙莉奈から私を受け取るようにして教授は私を暖かい家の中へ誘う。
リビングに通されて私は目を見開く。
「教授…、他の学生は?」
毎年のようにそこに居るはずの人達が居ない。
教授は私を見て悲しげに笑う。
「今年は三好君しか招待してないよ。」
「何故ですか?」
「君に助けが必要だから…、そして、君の助けが欲しいからだ。」
ゆっくりと呟くように教授が言う。
これは相手を刺激しない為の会話だと感じる。
「私に助け?」
確かに今の私には神の救いが必要だと教授の言葉に苦笑いしたくなる。
だけど私の助けが欲しいとはどういう意味?
あの事件以来、私は人の言葉に警戒する癖がついてしまったらしい。
何事もなく穏やかな会話の裏には本当は何かがあるのかもしれないと疑うようになった。