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メンタリズムな恋…
第17章 先生、未来へ向かおうよ
「確かにメンタリストとしての影響は大きな人でした。その喪失感は計り知れません。」
冷静に落ち着いて教授の言葉に答える。
メンタリストとしてはかなりの影響を受けた。
しかし、女性としての影響はなかったと思い込みたい私は教授の言葉を心の何処かで否定する。
女として…。
捨てられた。
その事実を認めてしまえば私は私で無くなる。
メンタリストとして自分の感情のコントロールだけを優先する。
冷静でなければ私は今すぐにでも消えたくなる。
だから自分を誤魔化す言葉を教授に並べ立てる。
「あの人に出会った事でメンタリストとしての格の違いを思い知りました。大和さんは残酷だと感じるほど常に自分に冷静で最悪の状況からでも問題回避の実行が出来る人でした。私にはそこまでの能力が無いと実感しました。」
「だから院に行く道を諦めると?」
やはり私の考えを教授は見抜いてる。
「メンタリストは所詮は肩書きであり、カウンセラーなどの職に付くなら院で学び教授のように臨床心理士の資格を取るべきだとは思います。ですが今の私にはカウンセラーとして人1人を助ける事すら難しいと判断したまでです。」
「さっきも言ったが三好君に助けて欲しい僕の患者が居る。」
「教授の患者?」
「そう、かなり長く治療を試みては居るが全く成果は出ていない。」
教授がふと寂しく笑う。
「その患者は今の三好君と同じ心境で何年もそのままになってる。」
「私と同じ心境?」
「そう、耐え難い喪失感と孤独感を抱えたままという事だ。」
教授の視線が私でなく遠い過去へ向かう。
その過去を振り切るように教授が軽く頭を振る。
「僕ももう歳だな…。」
苦笑いをして教授が私を見る。