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メンタリズムな恋…
第19章 先生、帰ろう
「とにかく、今は教授と話をするのが先…。」
慌てて脱ぎ散らかした服を着れば幸之助が情けない顔で私を見る。
「何?」
「俺のシャツ…。」
左肩が動かせない幸之助が1人ではシャツが着れないと嘆き呟く。
「ボタンダウンのシャツとか無いの!?」
「全部、車ん中…。」
「車は?」
「茅野ホテルの駐車場に置いて来た。教授が電車で来いって言うから…。」
「とりあえずコートだけ着なよ。教授に言って包帯を変えなきゃいけないと思うから…。」
幸之助にダッフルを着せようとすれば幸之助が私を引き寄せてキスをする。
「幸之助…。」
「教授…、怒ってんのかな?」
「何を?」
「俺が亜子に手を出した事…。」
「なんで教授が怒るのよ。」
「手を出すなって一番始めに言われてたからな。」
「教授が?」
「ああ…。」
情けない表情で俯く幸之助の頭を撫でる。
教授はそんな事で怒る人じゃない。
もし、怒ってるなら今回も私に幸之助のカウンセラーをやらせたりはしないはずだ。
「大丈夫だよ。教授は怒ってないよ。」
幸之助の不安そうな顔を撫でて笑う。
教授を失う事を幸之助は恐れてる。
私の心に再び幸之助の感情が流れ込む。
幸之助の痛みを感じてるだけじゃな駄目なんだ。
痛みを理解して幸之助を癒せる立場にならなければと私は幸之助に笑顔だけを向ける。
「先に行くね。幸之助はゆっくりでいいから…。」
学生用の部屋を先に飛び出しお風呂場の手前にある洗面所に向かう。
顔を洗って台所に向かえば教授は器用な手付きでオムライスと格闘中だった。
「手伝います。」
いつものように教授に声を掛ければ教授は穏やかな表情で
「卵を割って、サラダを盛り付けてくれないか。」
と私にやって欲しい事を指示して来る。