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メンタリズムな恋…
第19章 先生、帰ろう
お腹が空いた時だけ食べる。
それが幸之助の食事…。
何故、そんな風なのかと幸之助を目の前にして教授に疑問をぶつけてみる。
教授は苦笑いだけをして肩を軽く竦める。
「中国の習慣なども影響してる。幼少期に受ける習慣はそのまま根付く事が多いからね。」
「中国の習慣?」
「例えば、日本では当たり前のおにぎり…、中国では他人が握った米なんか食事として認めないという地域もある。」
「そんな風習があるんだ。」
「鍋も家族以外とは食べない地域もあるよ。他人と箸を同じ場所に入れる事を嫌うからだね。」
たかが食事ですら他人を受け入れない風習があり、幸之助はその風習の中で育ったと教授が言う。
他人を受け入れる事が難しい人…。
幸之助は教授が作ったオムライスをスプーンでつつき回す動作だけを繰り返す。
「食べ物を粗末にするんじゃない。」
父親のように教授は幸之助を叱る。
叱られた幸之助は
「あまり…、腹が減ってない。」
と言い訳をする。
普通の人にとって三食を食すという当たり前の食事すらも幼少期に貧しい生活を強いられて来た幸之助は殆ど経験をしなかった。
少しづつ、幸之助の状況が見えて来る。
「神奈川のご実家には帰らないつもりか?」
話題を変えるように教授が幸之助に言う。
教授の質問に幸之助の目付きが変わる。
鋭く敵を威嚇するような視線を教授に向けている。
この話題は幸之助にとってはタブーになるらしい。
教授は僅かにだけど幸之助の情報を私に与えようとしてくれる。
「行かない…。」
悲しげな声で幸之助が呟く。
「ご両親が心配するよ。」
「だから行けないんだよ。こんな姿を見たらあの人達はまた大騒ぎするに決まってる。そんな風に心配とかされても困る。」
これ以上は話をしたくないと幸之助が無理矢理に冷めたオムライスを口に頬張る。